筋トレと有酸素運動を連続して行う場合、脂肪燃焼を効果的に進めるための順番はどのようになるでしょうか。
結論から言うと、
1. 筋トレ ⇒ 2. 有酸素運動
の順番で行なうのが脂肪燃焼において効果的です。
つまり効果的に脂肪を減らしながら、筋肉もきちんと付けたい場合に有効な順番となります。
その理由としては、
筋トレ後に分泌される成長ホルモンの働きにより、脂肪分解酵素の量が増加し、このタイミングで有酸素運動を行うことで、脂肪の代謝が抜群に高まる
逆に筋トレを有酸素運動の後に行なった場合は、筋トレ後の成長ホルモンの分泌は抑えられ、脂肪も燃えにくい。
たった1つ順番を間違っただけで、脂肪が燃えにくくなるばかりか、筋肉の成長に重要な役割をする成長ホルモンも激減してしまう事態に陥ってしまうのです。
筋トレも有酸素運動もどちらの効果も得るには、先に筋トレを行って、あとに有酸素運動を行う。この順番だけでは必ず覚えておくようにしましょう。
しかし、筋トレと有酸素運動は、運動様式が違うことはもちろん、体に対する反応にも大きな違いがあります。
この2つの運動様式を組み合わせて行う(連続して行うか否かは問わず)場合の効果と問題点について、以下で詳しく見ていくことにしましょう。
筋トレと有酸素運動を一緒に取り入れた場合の効果と問題点
一般に筋トレと有酸素運動を一緒に取り入れるパターンとしては、大きく分けて2つ考えられます。(アスリートは除く)
- 筋トレをしている人が有酸素運動を取り入れるパターン
- ダイエットのために有酸素運動をしている人が筋トレも取り入れるパターン
これらのパターンについて具体的に解説していきます。
筋トレをしている人が有酸素運動を取り入れるパターン
一般的には、筋力アップや筋肉づくりだけを目的にしている場合は、筋トレに加えて特に有酸素運動を行う必要はありません。
なぜなら、筋繊維のタイプに変化が起こり筋肉を鍛える点に関して言えば、特にプラスの影響を及ばさないからです。
NSCA パーソナルトレーナのための基礎知識(第2版)によると、
研究によると、週3回、20週間にわたる有酸素性トレーニングの後、タイプⅡx繊維の割合が5%減少したことが示された。また、タイプⅡa繊維の割合に変化はなく、一方、タイプⅠ繊維の割合が4%増加したことが示唆された。
タイプⅡx繊維は、いわゆる速筋繊維で、疲労しやすいが瞬発的な力発揮において活動する筋繊維です。
タイプⅡa繊維は、こちらも速筋繊維に分類されるが、速筋と遅筋の両方の特性を持ち、ある程度の疲労耐性もある筋繊維です。
タイプⅠ繊維は、いわゆる遅筋繊維で、瞬発的な力発揮は苦手とするが、持続的・持久的な力発揮においては疲労耐性が高く、疲れにくい特性があります。
問題なのは、速筋繊維であるタイプⅡx繊維が減少していることです。
筋力アップや筋肥大においては、その多くが速筋繊維が成長することによって成し得るものです。
その速筋が損なわれてしまうことは、筋トレをすることによる十分な効果という点で、いくらかの影響を与えてしまうことになります。
つまり、余すことなく筋トレ効果を得る(特に筋肥大)ことを念頭に置けば、有酸素運動がマイナスになってしまうことがあるのです。
上記の研究は、有酸素運動のみを行った場合を示しているため筋トレと並行して行った場合の減少幅は少なるなると思われますが、有酸素運動を行っていない場合よりも、速筋繊維の増加にマイナス影響を与えることは確かです。
また、速筋繊維は、遅筋繊維よりも肥大の程度が大きいということが分かっています。
この点からも速筋繊維(タイプⅡx繊維)の成長速度の低下・鈍化、または減少が及ぼす影響は見過ごすことができないのです。
以上が、筋肉を鍛えることに特化して筋トレを行っている場合、「筋トレに加えて特に有酸素運動を行う必要はない」ことの理由になります。
しかしながら、有酸素運動には様々な効果があり、筋トレ効果と有酸素運動効果を同時に得たいといった場合は、健康の維持向上をはじめとして、より良い体づくりにおいて、とても有効な運動習慣であることは間違いありません。
例えば、筋トレと合わせて有酸素運動をする目的には、「心肺機能も高めたい・持久力も高めたい」、「汗を流してリフレッシュしたい」、「体脂肪率が高いので脂肪も落としたい」、「脂肪を落として筋肉のカットを高めたい」、「筋肉を鍛えながらダイエットしたい」、「メタボリックシンドローム、サルコペニア肥満、糖尿病などの疾病予防、改善につなげたい」など、様々あります。
このように有酸素運動を取り入れる必然性があれば、筋トレと並行して行うことに問題はないと言えます。むしろ、健康全般においては有効となります。
つまり、筋トレ効果を余すことなく享受して、徹底的に筋肉を鍛えたい場合を除いて、有酸素運動と平行することは速筋繊維に対するマイナス影響以上にプラス効果が大きいと言えます。
長期的に比較すると筋繊維の分布や肥大効果などに違いがみられる程度なので、気にしなくてもよいレベルであるものも確かです。
しかし、筋肥大目的なのに有酸素運動も同じくらい力を入れて取り組むのは、止めておきましょう。
1日30分以内、または筋トレしない日に60分以内の有酸素運動であればマイナス影響は軽微で、有酸素運動の効果がそれを補って余りあるものになりでしょう。
ダイエットのために有酸素運動をしている人が筋トレも取り入れるパターン
ダイエットでジョギングやウォーキングなどの有酸素運動を取り入れている人が、筋トレも取り入れることが往々にしてあります。
ダイエットにおいて有酸素運動と並行して筋トレを行うことは非常に有効な取り組みです。
むしろ、有酸素運動はしなくてもダイエットを成功に導くことができますが、筋トレなしでは、本当の意味でのダイエット成功を手にすることはできません。
なぜなら、ダイエットを成功させるためには筋肉の存在が欠かせないからです。
有酸素運動は脂肪を減らすための一つの方法であり、その方法は有酸素運動だけではありません。食事の管理でも脂肪を減らすことができます。
しかし、筋肉を効果的に付けるには筋トレ以外に代用が効かないのです。
筋トレとは、日常以上の負荷を筋肉に加えて強化、肥大、あるいは神経系の連携を高めることです。
では、なぜ筋肉が必要なのでしょうか?
ダイエットで最も多い失敗が、リバウンドしてしまうことです。
ダイエットを行ったことのある人で一時的に体重が落ちることは、ほとんどの人が経験していると思います。
しかし、体重が落ちてダイエットに成功したと思いきや、生活をダイエット前の状態に戻すと、再び脂肪蓄積モードに切り替わり、元の体重に戻ってしまうことが少なくありません。
元の体重に戻るだけで済むならいいのですが、以前にも増して体重が増えてしまうことさえあります。
なぜ、リバウンドしてしまうのか?
リバウンドにおける原因には、食事制限の反動によるカロリー増加と筋肉の減少が挙げられます。
中でも、根本的な原因に当たるのが、筋肉の減少です。
脂肪は積極的に落としても、筋肉まで落としてしまってはダメなのです。
ダイエットでよくある間違いは、目標まで体重が減れば成功と考えていることです。
ダイエットで成功と言えるのは、体重を落とすことではなく、脂肪を落とすことです。
もっと言うなら、脂肪を落として、筋肉は維持向上させることです。
体脂肪が落ちていれば、体重が変わっていないとしても問題ありません。
脂肪と筋肉の比重関係もあって、落ちた脂肪と同じ量の筋肉がついたとしても、細く見えるし、引き締まってスタイルは格段によくなります。体のラインは、筋肉に大きな影響を受けているためです。
そのため、体重を落とすことよりも、脂肪を落とすにはどうすればいいか。
脂肪を落として、筋肉を維持向上させるには、どうすればいいか。
このことを十分に認識し、考えならがダイエットに取り組む必要があるのです。
体重の減少をダイエットとする考え方の問題点など、動画で詳しく解説しています。
筋肉がダイエットを成功へと導く
ダイエットでは一定の食事制限が不可欠になるわけですが、特に糖質を制限している場合にエネルギーの不足分を補おうと筋タンパク質を分解して再合成する糖新生が起こって、エネルギー源を確保しようとします。
その結果、ダイエットを進めていく過程で筋量の減少が進んでいくことになります。
ダイエットにおいて筋肉量が減ることのデメリットは、基礎代謝が低下することです。
基礎代謝の内、筋肉で消費されるのは、基礎代謝全体の35~40%程度とされています。
1日全体の消費エネルギーからみても、25~30%を占めています。
筋肉減少によるエネルギー消費の低下の影響は少なくないことが分かると思います。
その結果、ダイエット成功後に元の食事に戻すだけでも、相対的にカロリーオーバーになってしまい、驚くべき速度でリバウンドが始まってしまうことになるのです。
これに加えて、ダイエットをあきらめたり、目標体重の到達で気が緩み、食欲に対する反動が襲ってくるわけです。
以前にも増して体重が増えてしまうという恐るべきことが起きるのは、必然であると言えるでしょう。
逆に筋トレで基礎代謝を向上させておくことは、ダイエット後のリバウンド防止に役立つことになるのです。
しかも、それだけではありません。
基礎代謝が向上した結果、ダイエット成功後も太りにくい体が実現できます。
糖質制限などせずに適正な食事に戻しても、筋肉のエネルギーが向上した分、多くカロリーを消費してくれることで可能となります。(もちろん、以前よりも食べるようになってしまっては、カロリーオーバーした分が脂肪となって蓄積されていきます)
また、筋肉が強化されることで日常動作がダイナミックになったり、歩幅が広がったり、歩く速度が早くなったりと、活動量が高まります。これも、エネルギー消費が拡大することから”太りにくい”要因の一つとなります。
このように筋トレは、一時的な効果だけでなく、中長期的に効果が得られるとても優れた運動習慣です。
筋肉を鍛えることにマイナスはありません。
ダイエットに限らず、ぜひ日頃の運動習慣として筋トレを取り入れてみて下さい。
有酸素運動も取り入れる場合は、最初に述べた通り、「筋トレ ⇒ 有酸素運動」の順番で行うようにします。
そうすることで、効率的な脂肪燃焼が促されることになります。
関連する内容を動画でも詳しく解説していますので、ご覧ください。
筋トレでダイエットはできるのか?考え方と導入トレーニングについて
終わりに
ダイエットを本当の意味で成功へ導くためには、脂肪は落としても、筋肉量は落とさない、できれば増やすと言うことです。
”本当の意味で”というのは、短期的な成功ではなく長期的な成功のことを指します。ずっと体重や体型を維持できる体を作ることですね。
筋トレで筋肉を活性化し、基礎代謝が向上することで、消費カロリーが増えます。
その結果、ダイエット以前の食事に戻したとしても、リバウンドしにくく、その後も太りにくいという絶大な恩恵を受けられることになります。
筋トレを併用しない場合に比べて、ダイエット効果が何倍も続き、体型を維持することができるのです。
以上のようなことから、筋トレで筋肉をつけ、活性化させることが、どれだけ重要であるか理解できたかと思います。
多くの人が望んでいるのは、一時的な体重減少ではないと思います。筋肉を減らすことは本意ではないと思います。
ダイエットに成功したら、多少の増減はあっても常に体重や体型を維持しておきたいと思っているはずです。
それを実現するために、ダイエットに取り組む時は、必ず筋トレも一緒に取り入れるようにして下さい。