筋トレの反復中に制限がかかったように動作が困難になる局面があります。この局面がスティッキングポイント(スティッキングリージョン)であり、可動域の中で最も弱い箇所(角度)になります。今回はスティッキングポイントの基本とチーティングやフォーストレップ法によって制限を解除する方法について学んでいきましょう。
概要と補足
スティッキングポイントは、スティッキングリージョンとも呼ばれ、「動作が最も困難になる局面」とされています。
簡単に言えば、動作がもっともきついポジションのことです。
あるいは「可動域の中で最も弱いポイント」や「筋肉の”短縮性収縮”(上げたり、引いたりする際の筋肉の収縮)の過程で動作が最もきついポイント」、「筋に対する外部抵抗のテコ比が最大になるポイント」など、いろいろな専門書により表現は違いますが、言っていることは同じです。
具体例を挙げると、個人差はありますが、上腕二頭筋(力こぶ)を鍛える種目・アームカール(バイセップスカール)では、肘の角度が90度程度の箇所、ベンチプレスやダンベルプレスでは、上げていく過程の中盤くらいがスティッキングポイントになります。
動作の最初はスムーズにスティッキングポイントを通過できますが、後半になると通過するのが大変になります。
それにより、目標レップ数を完了する前に動作をやめてしまうことにも繋がりかねません。
スティッキングポイントを通過できれば動作が可能であるにもかかわらず、スティッキングポイントの影響で動作が継続できなくなってしまうことは、追い込む上で制限となってしまいます。
つまり、ポイント以外の他の可動域では筋肉を十分に追い込めていないということです。
チーティングでスティッキングポイントを通過させる
そこで用いられるテクニックがチーティングです。
初心者の方は正しい動作で行うことが基本ですが、中上級者の場合、スティッキングポイントで動作に制限がかかったら、チーティングを使い、反動でポイントを通過させて(※)、通過後は正しいフォーム(ストリクトフォーム)で上げるテクニックを使うことがあります。
(※)あくまで、通過直後までです。フィニッシュまで一気に持っていかず、通過後は自力で動作します。
それにより、筋繊維を総動員させて筋肉を十分に追い込みます。
ただ、例えば10レップが目標回数としている場合は、5レップで制限がかかったとしたら、これはウエイトが重すぎる証拠です。
重量の設定を見直し、次回からのトレーニングに反映していきましょう。
特に基準はありませんが、オーバートレーニングやけがを防ぐ意味でも、チーティングと使うのはセットおよびレップの終盤に留めておいた方がいいでしょう。
例えば、5セット×各10レップでメニューを組んでいるとすると、4~5セット目でチーティングを用い、用いる箇所はレップ終盤の2~3レップに留めておくようにします。
上級者になるとチーティングを使わずに目標レップを終えたあと、さらに追い込むためにチーティングを使って数回反復する場合もあります。自分の体の状態や状況の把握、フォームの確立ができているがためになせるワザです。
なお、ここで解説しているのはスティッキングポイントの制限を解除(通過)させるためのチーティングであり、疲労を補助する場合のチーティングではありません。
どちらも疲労していることには変わりないわけですが、疲労はしていてもスティッキングポイントのみが通過できないか、スティッキングポイントにも届かず、わずかしか上げられない(動作できない)かの違いがあります。
ただ、疲労により上げられなくなった場合もチーティングを使うケースがあります。
例えば、アームカールで上げようとしても数センチ、あるいはわずかしか動かないような状態で反復できなくなったときにチーティングでフィニッシュポジションまで上げて反復(※)するケースです。
(※)スティッキングポイントの制限解除はポイント通過直後までチーティングで上げたら、そこからは自力で上げていきます。
これは下ろす動作においても筋肉を十分に追い込むテクニック「ネガティブレップ法」において用いられたりします。
このあたりは、「ネガティブレップ法でさらなる筋肥大を目指そう」を参考にして下さい。
もっとも細かい点を抜きにすれば、反復できなくなったらチーティングを用いることができることには変わりありません。
初心者はチーティングを使わずに気合でポイントを通過させる
繰り返しになりますが、初心者の方は正しいフォームにおいて追い込むことを基本として、チーティングを使うのは経験を積んでから取り入れるようにして下さい。
初心者の方は正しいフォームで動作を行っている際にスティッキングポイントにより制限がかかった場合でも、あきらめないようにすることで、のちのトレーニング成果に違いがでてきます。
その違いは、目に見える部分では筋量アップ(筋肥大)に影響してくるでしょう。
初心者の場合、力の使い方にもよりますが、まだ力が残っているのに、もうできないと錯覚してしまうことが少なくありません。
全神経を主働筋に傾け、渾身の一撃で通過を目指してみて下さい。
非常にじわり、じわりとではありますが、意外とスティッキングポイントを通過できたりします。
フィニッシュしたら、ブレーキをかけながらゆっくりと下ろしていきます。
その後は、正しいフォームではもう反復できませんので、セット終了なります。
この一撃が、3ヶ月、半年、1年と初心者から中級者、上級者へと経験を積んでいく過程で大きな差となって肉体に表れることになります。
フォーストレップ法でスティッキングポイントを通過させる
チーティング以外でスティッキングポイントを通過させる方法として「フォーストレップ法」があります。
フォーストレップ法は、反復できなくなったらパートナーに補助してもらい反復を継続する方法です。
スティッキングポイント通過のほか、疲労により反復できなくなったときにさらに追い込む方法として用いられ、反復の過程においてトレーニング実施者の安全を守る役目も果たします。
スティッキングポイントの影響で反復できなくなったら、その部分のみパートナーに補助してもらい反復を継続します。ポイントの通過以外は自力で動作するようにします。
この方法でもチーティング同様にセットの最終2~3回で用いるようにします。(ネガティブレップ法でレップの最初からパートナーに補助してもらう方法を除く)
フォーストレップ法の場合は、適切な補助ができる(補助技術や実施者の体力状態などの見極めなど)トレーナーや熟練者が補助につく場合に限り、筋トレ経験が浅い方でも用いることができます。
一回入魂
野球など球技で一球入魂といったりしますが、筋トレにおいても”一回入魂”の精神で取り組むことが大切になります。
よりよいトレーニング成果を上げられるように、気持ちを入れて筋トレに取り組んでいきましょう。