ストレッチポールの特徴を生かして全身をストレッチする10種類の方法・使い方を動画で実演・解説します。大胸筋、肩のインナーマッスル、肩甲骨周り、肩~胸、太ももなど、ストレッチポールを使うことで通常の方法では得られないストレッチ効果を実感することができます。

ストレッチポール

もくじ

ストレッチポールとは

ストレッチポールは、ストレッチをサポートする道具で、円筒の形状をしています。通常では得られない伸びを加えたり、自分で伸ばしにくい箇所を伸ばしたりと形状を利用することで、これまでとは違ったストレッチ効果を得ることができます。

つまり、円筒形であるがゆえに高さと転がりを利用できるのがストレッチポールの大きな特徴で、この特徴によりこれまで行き届かなかった箇所のストレッチが可能になります。

伸ばしにくい部位を伸ばしたり、より伸ばすことができる点で優れていると言えます。

ストレッチポールの効果

効果については、基本部分では一般的なストレッチと同じで、筋トレやスポーツなどの運動前はウォームアップとしてコンディショニングアップ、運動後はクールダウンとして疲労回復、タイミングを選ばない効果としては柔軟性の向上、姿勢改善、コリの改善などの効果を得ることができます。

これらに加えて、ストレッチポール特有の効果があります。

ストレッチポールに乗ると体が沈んで、筋肉が緩みます。このとき通常では得られない伸びを感じられるわけですが、それに加えて動きを加えることでインナーマッスルが刺激され、肩関節、骨盤、股関節などが本来あるべき状態にリセットできるとされています。

もちろん、これら骨格については積み重ねが必要で、1回でどうにかなるものではありません。しかし、1回やっただけでも背筋の伸びが感じられ、スッキリ感を得ることはできます。実際、私の場合、ストレッチポールを始めた当初は、ストレッチ後に立ち上がったとき、景色が違った印象に見えたくらいです。立ち姿勢も楽になりました。おそらく、リラックス効果も影響していると思われますが、一時的でも骨格が整ったことが景色に変化をもたらしたのではないかと思っています。

また、ポールに仰向けに寝ることで胸郭が開き、呼吸が楽になります。それに伴い、呼吸が深くなり、リラックス感を得ることができます。

また、ストレッチポールを使って筋膜リリースすることで、筋膜の癒着などによって起こる不調を改善することも可能です

ストレッチポールは応用範囲が広く、下記で解説するストレッチをはじめ、筋膜リリースやリラクゼーションなど、いろいろな場面で活用し、効果を実感して下さい。

また、日頃ストレッチしていない人は、意外といろいろな部位に疲労がたまっていることがあります。ぜひ、ストレッチポールで実施前と後の違いを実感して下さい。

ストレッチポールで行うストレッチの方法

大胸筋、肩、肩甲骨周り、股関節周りなど、ストレッチポールの特性を活かした方法と使い方を中心にご紹介します。動画は(1)~(9)までとなりますが、(3)の肩甲骨周りをストレッチする方法は1つの動画内で2つ紹介していますので、合計10種類のストレッチで構成されています。

筋トレ前のストレッチとして勝ち要する場合は、一つの部位に対して15~20秒程度、動的なものでは10回を目安に行うようにします。

筋トレ後やスポーツ後のクールダウン、または日頃の健康目的で行うストレッチであればスタティツクを中心に30~90秒×1~2セットを目安に入念に行うようにしてみましょう。動的なものは10回×2セットを目安に行うとよいでしょう。

(1)大胸筋をストレッチする方法

初回は、効果を確かめるために腰の隙間を確認した後、実際のストレッチに入っていきます。

まずは、リラックスして自然な状態で仰向けになって下さい。この状態で腰の下に手を入れて隙間を確認します。どのくらい隙間があるのか覚えておきましょう。

ケースとしては、(感覚的になりますが)手と腰の隙間が大きい場合、手をねじ込まなければ隙間に手が入らない場合などがあります。手と体の距離が大きくない場合、腰に触れながらもスムーズに手が入る場合が適正であると言えます。

次に使い方の初歩として、ポール向きについてです。動画を見ていただくと一目瞭然ですが、カバーが付いている方が足側、付いてない方が頭側になります。向きが逆でも特に大きな問題はありませんが、カバーが付いている方を頭側にするとカバーのつなぎ目が当たって違和感が出るので、基本はカバーが無い方を頭側にして使うようにします。

さて、実際のストレッチに移ります。

初回は、ストレッチポールの上に仰向けになり、腕を広げて乗ることで大胸筋をストレッチしていきます。

まずは、ポールの下側に座り、手をつきながらゆっくりと寝ていきます。この時、左右のズレが無いようにポールの中心に背骨が乗るようにします。

乗った時、ポールから頭が出ているようであれば、体を下にずらして頭からお尻がポールに入るように調節します。膝は立てておき、手を横に置いてリラックスします。

体が左右にズレてくるようだったら、意識してポールの中心に体を保持するよう心がけましょう。

ここまでが、ポールに仰向けになって行うストレッチに共通するリラックスポジションになります。

ここから、ポジションを変えたり、動作を加えていきます。

今回の大胸筋ストレッチでは、基本姿勢から手のひらを天井に向けて、腕を横に開いていきます。この時、肘が浮くまで開く必要はありません。肘が床から離れない範囲で広げ、リラックスします。ポールに肩甲骨と肩甲骨の間が沈んでいくイメージで力を抜くようにします。

この姿勢を30秒保持したら手を元の位置に戻して終了です。セット数は、状況に応じて1~3セット行うようにします。

ポールから下りる時は、ゆっくりと横に転がるようにして下りるようにします。

最初に確認したときの隙間と終わった後の隙間を確認してみて下さい。うまくストレッチできた場合、反り過ぎだった人は反りが少なくなり、隙間が無かった人はやや反った状態となります。ただし、これは一時的のものなので、しばらくするとまた元に戻ってしまいます。普段から本来あるべき位置に骨格を整えるためには継続してストレッチしていくことが必要になります。焦らず、リラックスして取り組んでいきましょう。

(2)肩のインナーマッスルをストレッチする方法

最初の大胸筋のストレッチで解説した仰向けの基本姿勢をとります。

基本姿勢から腕を真横に伸ばし指先から逆の指先まで一直線になるようにします。これが肩のインナーマッスルをストレッチするスタートポジションになります。

この姿勢から腕を前後にひねっていきます。

注意すべきは、手首をひねるのではないと言うことです。意識しなければ、どうしても手首だけで動作してしまいがちになってしまいます。しかし、肩のストレッチなので肩に動作を加えなければ、効果を得ることはできません。

そのため、肩を起点にひねりを加えることを意識して行うようにすることが最も大切な動きとなります。

手首は固定して肩の動きに合わせて動くくらいの感覚で行ってもいいでしょう。もちろん、肩をひねる際に手首もひねった方がやりやすければそれでも構いません。ただし、肩がメインである事、肩を起点にすることは必ず守るようにしましょう。

可動域は大きくありませんが、自分が可能な範囲で肩をひねることができていればそれでOKです。

肩に違和感がある人、日ごろあまり肩関節を使わない人、肩周辺に疲れを感じている人などをはじめ、投げる・打つ・受けるなど肩関節を使うスポーツをしている人にもおすすめです。

(3)肩甲骨周りをストレッチする方法

動画内で肩甲骨周りのストレッチを2種類、実践・解説しています。

一つ目は、仰向けの基本姿勢をとったら、腕を少し開き、手のひらを下に向けます。これが肩甲骨周りをストレッチするスタートポジションになります。

この姿勢から、床を磨くようにして手で小さな円を描いていきます。

ポイントは、肩甲骨を起点に動作することです。円を描くのは肩甲骨の動きを作り出すための手段であり、目的ではありません。手の動きに意識を集中し過ぎると肩甲骨の動きが損なわれてしまうので、肩甲骨を動かした結果、円が描かれるイメージで動作するようにして下さい。

肩甲骨が動作できていれば、肩甲骨が寄ったり、広がったりすることを感じることができると思います。手の方ではなく、その感覚に意識を傾けるようにします。リラックスして肩周りに力が入らないように注意して動作してみましょう。

一方向に15秒ほど円を描いたら、逆側も同様に15秒行います。

可動域を大きくとるようなストレッチではありませんが、日ごろ使わない肩甲骨を優しくほぐしてくれます。肩こりのある人、腕が上がりにくい人、猫背の人、腕の動きを滑らかにしたい人などにおすすめです。

2つ目は、基本姿勢から両手を腕に伸ばして合わせます。これがスタートポジションになります。

この姿勢から肩甲骨を開きながら、腕を天井に突き上げていきます。上げ切ったら(肩甲骨を開き切ったら)、ゆっくり下ろして今度は肩甲骨を閉じていきます。閉じ切ったら、再度突き上げる動作を繰り返していきます。

ポイントは肩甲骨を自分ができる範囲で、しっかりと開いて、閉じることです。腕の方に意識を向けるのではなく、肩甲骨の動きを意識しながら動作するようにしてみましょう。腕の上下だけで動作しないように注意して下さい。

下ろししたときは両肩を落とし、肩甲骨でポールを挟みこむイメージで行うよと正確な動作ができるようになります。10回を目安に行ってみましょう。

1番目の肩甲骨ストレッチに比べてやや可動域を広くとった動作が可能になります。基本的な効果に加えて、野球、バスケットボール、テニス、水泳などの肩甲骨をよく使うスポーツにもおすすめです。

(4)肩~胸をストレッチする方法

肩周りから大胸筋を連動させて行うストレッチです。

基本姿勢をとったら、一方の腕を頭上に上げていきます。手の甲が床に付いたら少し静止し、元の位置に戻していき、同時に逆側の腕を頭上に上げていきます。腕が途中ですれ違う形で、互い違いに動作することになります。

肩関節の柔軟性が不足している人は、手が床に付かないかも知れませんが、それで大丈夫です。自分ができる範囲で動作するようにして下さい。個人差や肩関節の状態によって違いはありますが、ストレッチを習慣にしていると、通常は可動域が少しずつ広がっていき、いずれ床に付けられるようになります。

ポイントは、腕を真っ直ぐに動作させることです。イメージとしては上腕が耳の真横を通るようにします。床に手の甲を付けようとするがあまり、腕を横に開いて付けやすくしてしまう傾向があります。あくまで床に付ける事が目的ではなく、自分が持つ柔軟性の限界まで伸ばすことが目的です。正しい動作を守り、自分ができる範囲で動作するようにしましょう。

肩コリ、四十肩、五十肩、肩関節や肩甲骨の可動性を上げることに効果があります。もちろん、肩甲骨周りの可動性と胸の開きを良くすることでスポーツのパフォーマンスアップにも繋がります。

(5)肩・肩甲骨周り・胸をストレッチする方法

(4)と同様に肩から胸までを連動させたストレッチですが、これまでより肩甲骨の動きを強調して行うストレッチになります。

ストレッチポールで行うストレッチとしては非常にダイナミックな動きが作り出され、肩甲骨を中心に様々な角度からストレッチできます。

動作は、基本姿勢をとり胸の前で手を合わせます。これがスタートポジションになります。

ここから手を合わせたまま顔の前を通り頭上に腕を伸ばします。床に手が付いたら、手の甲を下に向け、円を描くようにして腕を閉じていきます。

再び、胸の前で手を合わせて同様の動作を繰り返していきます。

なお、肘は伸ばしたままま行うのが基本ですが、床に手が付かないようであれば肘を曲げて床に付けるようにしても構いません。その場合、体に近くなるほど肘が伸ばしやすくなるので、円を描きながら徐々に肘を伸ばしていくようにしてみましょう。

肘を伸ばしたままで付かない人もストレッチを習慣にすることで可動性と柔軟性が高まり、徐々に付けられるようになっていきます。もっとも床に付けることが目的ではないので注意して下さい。目的は、あなたが持っている現状の可動性、柔軟性を活かすことで効果を引き出していくことです。そのため、付かなくても精一杯の範囲で動作していければ、あなたにとっては十分な効果を得ることができるでしょう。

上半身については、ここまで解説してきた(1)~(5)までのストレッチを一連の流れとして組み合わせることで、より一層の効果が期待できます。もちろん、時間がない場合や細切れ時間を使いたい場合などは、一つずつ行っても構いません。

(6)股関節周りの柔軟性をアップさせるストレッチ方法 part1

ここから下半身のストレッチで、ここでは股関節周りのストレッチを解説します。part1とpart2の2種類の方法があり、ここではpart1をご紹介。Part2は次の動画でご紹介します。

基本姿勢をとったら、足の裏を合わせて股を開きます。この時、かかとはポール近づけるようにします。膝はできるだけ床に近づけるイメージで落としていきます。柔軟性によっては45度くらいしか開かないこともありますが、それがあなたの限界であれば、それで十分です。

この姿勢を30秒程保持して股関節を伸ばしていきます。

ポイントとしては、全身をリラックスすることです。特にお尻に力が入りやすいので、力が入っていると思ったら意識して力を抜くようにしましょう。お尻がリラックスしているとポールに沈み込むような感覚を得ることができるので、そのまま身を任せます。その状態を保持することで股関節が緩み、最大限ストレッチすることができます。

もの足りない人は、腰をゆっくり左右に振ることで、一種の反動を使って伸びを高めるとよいでしょう。

股関節に違和感がある人、股関節に疲れがたまっている人のほか、蹴る・ジャンプする・脚を開くなど股関節をよく使うスポーツなどに有効です。

(7)股関節周りをストレッチする方法 part2

股関節周りをストレッチする方法のpart2です。

今回は足の向きを逆にすることで、part1とは違ったストレッチ効果を股関節に与えることができます。

まずはいつものように基本姿勢をとり、ここから膝の位置はそのままで膝から下を外側に開きます。この姿勢のまま30秒、長くて90秒程度伸ばしていきます。

このストレッチでは、股関節を内旋させることで股関節周りをストレッチしていきます。それを十分に行うためには、膝の位置はそのままか、やや内また気味にして、股が開かないようにするのがポイントです。膝から下だけをできるだけ外側に開くことを意識して、両足が徐々に遠ざかっていくようなイメージでストレッチしてみましょう。

part1とは、まったく違う反応を得ることができるので、part1とこのpart2はセットで行うことが勧められます。part1でもお話ししたように、お尻の力を抜き、リラックスして行うようにします。

(8)太もも付け根をストレッチする方法

太もも付け根をストレッチする方法です。普段意識して使われない深層外旋六筋、腸腰筋、恥骨筋などのインなマッスルをストレッチしていきます。

基本姿勢をとったら、脚を伸ばして少し開きます。これがスタートポジションになります。

この姿勢から足を内側に入れたり、外側に開いたりして太ももの付け根を左右にねじるようにして動作します。お尻の力を抜き、リラックして行うようにしましょう。

この動作を30秒、長くて90秒程度動作して終了です。

なお、足首の動きは伸びやすくするための補助に過ぎません。あくまで太もも付け根のストレッチなので、足首だけが先行して動作しないように注意して下さい。太ももの付け根を左右に回転させ、伸びを感じることが大切です。

回旋運動は繊細なので、反動を付けると痛める場合があります。ゆっくり、じわ~と動作することを心がけて下さい。

できれば(6)~(8)までを股関節周りの一連のストレッチとして一緒に行うことが勧められます。

このストレッチでは、股関節周りの疲労回復、太もも付け根のコリや違和感緩和、脚のスムーズな動作性確保などの効果を得ることができます。可動域は狭いですが、ゆっくりと可能な範囲で動作するようにして下さい。

(9)締めのリラックス動作

ここまでの(1)~(8)すべてを行った最後、または(1)~(5)や(6)~(8)の部位別ストレッチをセットで行った最後に行う締めのストレッチです。

このストレッチは最後に行うことになるので、直前のストレッチが終わったら、そのままポールに乗ったまま続けて行うようにします。いったん下りて、リセットした方がやりやすければそれでも構いません。

動作は、基本姿勢から腕をやや横に開きます。この姿勢から体全体を左右に移動させていきます。これにより、背面全体のマッサージ効果で副交感神経が刺激され、筋肉のリラックス効果と心地よさを感じることができます。30秒~90秒程度を目安に心地よさを感じる範囲で行うようにしましょう。

目をつむって行うとゆりかご効果を感じられ、よりリラックスできることでしょう。

心を落ち着けて行ってみて下さい。

終わりに

それぞれのストレッチを個別に行ってもよいですが、できれば時間をとって(1)~(9)まで行って下さい。こうすることで1日の疲れのリセットにも効果的ですし、筋トレやスポーツ後のクールダウンや使った筋肉の疲労回復に十分な効果を得ることができます。

または、上半身や下半身とに分けて使った箇所や疲れている箇所に焦点を当てて行ってもよいでしょう。

その場合は、上半身を(1)~(5)+(9)、下半身を(6)~(8)+(9)とに分けて、目的に応じてどちらかのセットを行うようにしてみましょう。

ストレッチポールは非常にシンプルな道具ですが、その使い方や使い道は工夫次第で無限にあると言ってもいいかも知れません。

ぜひ、ストレッチポールで体も心もリフレッシュしてもらえれば幸いです。あなたの健康生活が豊かになることを願っています。