お腹の下を鍛える自重トレーニングは各種ありますが、レッグレイズのように道具や場所を選ばず自宅などで手軽にできる筋トレ種目はほとんどありません。多くの人が下腹対策や徹底した腹筋強化のために取り入れており、効果は折り紙つき。反面、腰に負担がかかる自重トレーニングの代表格でもあります。効果を引き出しながらも、どのようにして安全にトレーニングするのか、その方法について学びます。
腰を守りながら、腹筋群全体を効果的に鍛えよう
腹部を強化する種目、レッグレイズをご紹介します。
クランチと同じように腹部の筋群をすべて動員(主に下部)することになりますが、一般的にはこのように行います。
仰向けになって真っ直ぐに伸ばした脚を上げて、下ろす動作を繰り返します。下ろした時にかかとが床に着いてしまわないようにして上げ下ろしをします。スピードをコントロールして、お腹に力を入れたまま動作を反復します。
上記の方法は、ふつうに行われているレッグレイズです。運動強度を増すために、例えば2人組で行ったりするときに、一人に頭の上の方に立ってもらい足首を持って、脚を上げた時にパートナーから押してもらう方法で負荷を掛けるやり方があります。これは体育の授業などで経験されたこともあると思いますが、私(森部先生)はこの方法はあまりおすすめしていません。
一般的なレッグレイズの問題点
この方法の問題点は、頭を床に付けていることによって腰がどうしても反りやすくなってしまうんですね。
これは骨格の構造上起きてしまう問題なので、最初から骨格が変形しているような人を除くと、普通の人であれば腰の下に隙間が空いてしまうんですね。隙間が空いた時に脚が伸びて床に近づいていると重力に対して体が直角の状態になっていますので、負荷は非常に大きくなっています。腰が反っている分、腰が支点になりますので、そこに負荷がかかってしまって痛めやすくなってしまうんですね。
せっかくお腹を鍛えるためにやっているのに、トレーニングの最中に腰を痛めるということがあってはもったいないですから、少し強度は上がりますが腰の負担を減らして行う効果的な方法をご紹介します。
様々な効果をもたらす、腰の負担を減らすやり方
スタートの位置は、仰向けに寝転がって後頭部を床から浮かします。目線はおへそに持っていきます。このように上半身を巻き上げた状態にしますと、すでに腹筋群は収縮を始めています。この時には腰の隙間はほぼなくなっています。
このようにすることで腰を安定させるんですね。この状態でレッグレイズを行っていきます。目線は常におへそに持っていったまま動作を行います。また、脚を下ろした時に腰が脱力して反らないように腹部は収縮させたまま動作します。
このようにヘッドアップをした(頭を上げた)状態で行うことによって、首を強くなりますし、腹直筋軍は収縮の度合いが高くなります。その状態でレッグレイズを行うことによって、下腹部を中心として筋肉が強化されていくことになります。
「レッグレイズ」の筋収縮のメカニズム
分かりにくいのは、レッグレイズで実際に動いているのは腸腰筋群と言いまして、股関節を屈曲させるための筋肉なんです。
上半身の部分は体幹を縮めることによってアイソメトリックな等尺性の筋収縮を起こしていますので、腹直筋群はそんなにダイナミックな動きはしてないわけですね。
グッと固まった、縮こまった状態になっていますが、その縮こまった状態の中で脚が上がったり、下りたりするときに下腹部から強制的にエキセントリックな伸張性の筋収縮が引き起こされて負荷の高いトレーニングができるというわけです。
負荷の上げ方
この場合のトレーニングの負荷としては、自分の脚の重さと長さがテコの関係によって、運動中に可変しながら行われています。体力が付いて、楽になってきた場合は自宅など室内であってもシューズを履くとか、足首に鉛の板(パワーアンクル・アンクルウエイト)を巻きつける。このような方法によって負荷を上げることができます。パートナーがいれば、上記で説明したように脚を押して負荷を加えることもできます。
回数について
まずは正しいフォームで、1分間以上連続でできるようになることが最低限必要になるところです。反復の回数としては20回以上が楽にコントロールできるようになってきたら、そこから回数を増やす、あるいはおもりを着けて負荷を上げていく。こういった方法で強度を高めていくと効果的に筋トレを進めることができるでしょう。
レッグレイズの効果
レッグレイズは、下腹の引き締めに効果的な種目の代表格で、ぽっこりお腹が気になっている、下腹部のたるみが気になっている、シックスパックを際立たせたい、下腹を強くしたい等々、目標達成や悩みを解決する筋トレ種目として多くの人に活用されています。
本講座でご紹介したレッグレイズは、それだけの効果に留まりません。
まず、上体を巻き上げて動作することで腰の負担を減らすわけですが、このとき腹直筋が常に強い筋収縮を起こしています。このアイソメトリックの筋収縮により、上部にも強い負荷がかかり、腹筋全体を引き締めることができます。
腹直筋を収縮させたままの動作になため、通常のレッグレイズに比べて、きつい方法になりますが、バランスの取れた非常に洗練された腹部を作ることができますので、腰に不安のない方も、ぜひ取り入れてみて下さい。
加えて、動作中に目線をおへそに向け続けることで、首の強化にもつながります。この場合も首回りの筋群にアイソメトリック収縮が起こっているわけですが、特に頸椎の屈曲保持により胸鎖乳突筋に刺激が入ります。首を引き締めたい、首のたるみを防ぎたい、首の安定性を高めたい、そのような効果を得ることができるでしょう。
このように下腹部だけでなく、同時にいろいろな部位を鍛えることができますので、ボディデザインなど見た目効果だけでなく、体力アップの一環としても、ここでご紹介したレッグレイズを活用いただけるかと思います。
初心者の方は、できることから少しずつで大丈夫です。まずは始めてみましょう。
【関連記事】
レッグレイズで腹筋下部を効果的に鍛える。
下腹部を鍛えるハンギングレッグレイズの方法
レッグレイズの目標回数(時間)と頻度
- 【回数】60秒×1~3セット
※続けて行うことができない場合は、10秒を6回に分けて行ってもOK
※セット間の休憩は60秒 - 【頻度】毎日~1日おき
※疲労度に応じて調節する
※場合によってはもっと空ける
筋トレTV 出演・動画監修
森部昌広 先生
九州共立大学 経済学部准教授・経済経営学科スポーツビジネスコース主任・サッカー部部長、一般社団法人全日本コンディショニングコーチ協会代表理事、一般社団法人日本メンタルトレーナー協会理事、九州大学非常勤講師(健康・スポーツ科学)、財団法人福岡県スポーツ振興公社スポーツアドバイザー、株式会社GET専務取締役、アイ・エム・ビー株式会社取締役、森部塾塾長