腹筋トレーニングを続けているけど、なかなか引き締まってこない・・・、割れてこない・・・、シックスパックには程遠い・・・などと、やっているけど期待する効果が出てこないといったケースがよくあります。効果が出にくいのは、刺激を逃がしたり、力を抜いたり、しっかりと効かせられていないことが原因である場合が多くあります。そのような問題を解決すべく今回は、“効かせざるを得ない”クローズドキネティックチェーンを意識した腹筋トレーニングをご紹介します。



腹筋トレーニングの手法と食事について

ウエストを効果的に引き締めて、できれば腹筋を割っていく、シックスパックを作りたい方のためのトレーニングを解説します。

よく行われている自宅でのトレーニングの中で腹筋をトレーニングする種目としてはシットアップクランチのように脚を固定して、上半身を持ち上げる方法がよく行われています。

別のバリエーションだと、上半身を固定してレッグレイズのように脚を上げる方法もあります。

このように上半身、下半身のどちらかの動きを止めて、一方が稼働しているというのが一般的なトレーニングとなっています。

共通しているのは、反復回数を多くこなさなければならないということです。

通常、筋トレの場合ですと10回とか12回とか比較的負荷を高くして、反復回数を2ケタの前半くらいで抑える方法がよく行われています。しかし、腹筋群関しては持久力が非常に高い筋群が揃っていますので、比較的反復回数が多く、少なくても20回とか30回というのが通常行われているやり方であります。

それでどのくらいの方がウエストを引き締めて、しかも腹筋を割ることができているのかと言うと、なかなかそれについての統計的なデータを観察することはできません。

多くの場合は、観念的に通常そう言われているということで耳学問的に理解されているのではないかと思います。

実際、私(森部先生)のジムの中で、これまで見てきたクライアントさんとかで観察しましても、反復回数を増やすトレーニングだけやっていました方々でウエストの部分がいいコンディションをしているという方はあまりお目にかかったことはありません。実際に私のところではそのような指導はしておりません。

一つご理解していただきたいのは、正しいトレーニングをやるということで、トレーニング方法だとかプログラムの組み方とかは、もちろん重要になりますが、お腹周りのコンディションを悪くしているもう一つの要因としては、運動不足以外に食事の部分がコントロールできていないというものがありますので、やはり良好なウエストを作っていくためには、食事の部分にも考慮していく必要があります。

近年では、炭水化物を非常に少なする低炭水化物ダイエットがポピュラーになってきていますが、一概に炭水化物を減らすということだけでなく、総摂取カロリーを減らすということだけでもなく、自分の体質には何が合うのかということを考える必要があります。実際にはDNAの鑑定を受けて自分の体がどのような特性を持っているかを知ることが非常に重要になるでしょう。

しかし、そこにはお金がかかりますので、なかなかそこに経費を使いたくない、使えないという場合には、自分で試してみるんですね。

例えば、一週間の食事メニューの中から糖質・炭水化物だけを抜いたら、自分の体がどう変わるのか。比較的炭水化物を今まで変わらず摂っているけど、油ものを避けたり脂質だけを減らしたり、カットするとどうなるのか。あるいは、トータルで全体的に食事のボリュームを減らすことで自分の体がどう変わるのか。こういった観察をしていくわけです。

一週間、二週間観察をして、明らかに自分にはこれは合っていないんじゃないかとか、これを取り除くことによってウエストが引き締まった感じがあるなど、傾向を掴んでいくことが非常に重要です。

トレーニングプログラムと並行して食事の部分にもぜひ注意をしていただきたいと思います。

効果的を引き出す腹筋トレーニング法

椅子を使ってトレーニングしていきますので、自宅にある安定した椅子をご準備ください。

椅子を使って何をするのかと言うと、脚上げ「レッグレイズ」(広義の種目名。ここでの正式名称は「ニーアップ」となります)と言う種目をやるわけですが、片脚ずつやるパターン、交互にオルタネイトでやるパターン、それから両方同時にやるパターンの3種類をご紹介したいと思います。

この筋トレの特徴的な部分としては、お尻を浮かすということです。そのために腕を使います。

椅子に座って、太ももからお尻の横あたりの座面をしっかり掴んで、お尻をグッと持ち上げます。このときには肘関節を完全に伸ばした状態で、上腕三頭筋が起動(収縮)した状態になっています。このとき大胸筋も収縮しています。

このようにお尻を浮かすことで、何が起きているのかと言うと、上半身が力んだ状態になっています。これは運動連鎖という考え方で言うと、「クローズドキネティックチェーン」という考え方です。手や足の末端が閉じた状態ですね。空中に宙ぶらりんの状態ではなく、閉じた状態でやっていますので、自分の意識とは全く関係なく、自動的に体が反応して筋収縮が筋収縮が起きている状態を示しています。

今回の筋トレでは、椅子の座面を掴んでお尻を上げた状態、このポジションがクローズドキネティックチェーンを成しています。

片脚ずつ行う「ニーアップ」

まず、一種類目は、この状態から片脚をグッと持ち上げます。膝の目標を肩ぐらいにおいて、なるだけ高く上げていきます。

ポイントとしては、なるだけ高く上げるその時に腹直筋や腹斜筋が最大に収縮するポイントになりますので、できるだけ膝の位置は高い方がいいわけです。

そうすると脚を下ろす作業はほとんど意味がないことになりますので、より正確に行うためには、お尻を持ち上げて、そこから膝を持ち上げキープした状態で、それよりも高いところにさらに反動を使ってちょっとだけ筋収縮を起こすようにします。

このようにすることによって、体の中のどこも休んでいません。すべての筋群が運動に参加していますし、特に持ち上げている方側の腹筋群は非常に強い収縮が起きています。これは最大収縮ポイントをしっかりと作っていくために行うトレーニングテクニックになります。それと同じことを逆側でも行います。

この方法によって、腹筋群を非常に効率よく収縮させることができます。

腕を押さえることによって上半身が運動に参加することで力が逃げるポイントがないということと、そこに向けて股関節を屈曲させることで腹筋群の収縮を起こします。

左右交互に(片脚ずつ)行いますので、人によっては左の方が強いとか、もしくは弱いといったアンバランスが起きる可能性もあります。その場合は、弱い方を先にやって弱い方の回数に強い方も合わせていきましょう。

例えば、左の方が弱く15回で限界に達したとしたら、右が15回超行えるとしても15回で終えるようにします。

左右の脚を交互に行う「オルタネイト・ニーアップ」

二種類目は、動きのバランスを取るために左右交互に行っていきます。この場合には、下まで下ろして構いません。出来るだけ高いところに上げていきます。腕をついて、椅子の上でウォーキングをやっている感じですね。

これは運動時間を長くしていくと、有酸素的な要素も含まれてきますので、もしトレーニングの持続時間を長くすることができる方の場合は、手首を痛めたりしない範囲の中で少し運動時間を長くしていくとよいでしょう。

いずれにしても、最低1分間(各方法共通の目標時間)はこのトレーニングを継続して下さい。

両脚を同時に動作させる「ダブルニーアップ」

片脚ずつ行う、交互に行う、ここまで楽にできるようになったら、今度は両脚を同時に動かしていきます。

第一段階としては、脚を上げて一回下ろす方法がまず一つあります。

次の段階としては、上げたまま収縮させる。そのことによって、もの凄く体幹が緊張状態を持続することができますので、多くの方がウエスト周りに顕著な効果を感じることができると思います。

スポーツの世界では器械体操の選手やブレークダンスのダンサーがやっているような動きに近い要素が含まれていますので、彼らの体が引き締まっているのを見れば、どのような体になっていくというのはおおむね理解できると思います。

バリエーションとしては、膝を持ち上げることができるようになったら、脚を上げたまま回転を加える方法(ダブルニーローテーション)があります。回転を加えることによって、腹筋群の運動へ参加する順番が変わってきますので、また非常に面白いトレーニング刺激を加えることができます。

少しずつ回数を増やしていきながら、持続時間を延長して、1分間の中で何回できるか、こういった感覚でトレーニングプログラムを、ボリュームを増やしていくとよいでしょう。

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各種ニーアップ(共通)の目標回数(時間)と頻度

  • 【回数】60秒×1~3セット
    ※続けて行うことができない場合は、10秒を6回に分けて行ってもOK
    ※セット間の休憩は60秒
  • 【頻度】1日おき
    ※疲労度に応じて調節する
    ※場合によってはもっと空ける

筋トレTV 出演・動画監修 森部昌広 先生
九州共立大学 経済学部准教授・経済経営学科スポーツビジネスコース主任・サッカー部部長、一般社団法人全日本コンディショニングコーチ協会代表理事、一般社団法人日本メンタルトレーナー協会理事、九州大学非常勤講師(健康・スポーツ科学)、財団法人福岡県スポーツ振興公社スポーツアドバイザー、株式会社GET専務取締役、アイ・エム・ビー株式会社取締役、森部塾塾長