筋トレを始めたいけどどのようにやればいいのか分からないといったことがよく聞かれます。特に女性の方ではどのような種目をどのくらいの重さでやればいいのか分からず書籍や聞いた話に頼って正しいかどうか分からないまま始める方も少なくありません。そこで、今回は女性が筋トレを開始して、効果を上げるために知っておきたいポイントをお話ししたいと思います。



女性も男性やスポーツ選手と同じ

実際に筋トレをやることになった時にどうやって進めていけばいいのかと言うことについて、今回説明していきたいと思います。

まずは、女性にはどのくらいの負荷の筋トレがよいのかと言うことについてですが、軽い負荷でゆっくりとやるとか、反復回数を多めにやった方が体が引き締まるとか、そのように聞いたことがあるのでやっているといった方も多いです。

実際に書店などに並んでいるボディメイクを目的とした色々な実用書がありますが、その中で女性は無理のない負荷を選んで、反復回数は多めにやると体が引き締まるというようなことがよく書いてあります。

おそらく今話した内容を聞いたことがある、私もそれをやっているといった方は多くいらっしゃると思います。

ところが、これらの方法は違っています。

まず、広告を出す側、PRする側の心理状況としてはコマーシャリズムが優先してきますので、見てもらわなければいけない、読んでもらわなければいけない、取り組んでもらわなければいけないというものがありますから、その時の実際に利用する側、ユーザーのことを考えたら心理的抵抗が低くなるように伝えることが普通に行われます。

したがって、最初からトレーニングンの原理・原則をバンと打ち出して、過負荷の原理で筋肉にはきついことをやらせないと変化しないといったことを言うと、そんなきついことやりたくない、そんなんだったらやらなくていいということで、最初からやらない人たちが増えてきます。

そういったところを払拭するためにできるだけ心理的に取り組みやすいような紹介の仕方がされているのが実態だということをまず念頭に置いて下さい。

実際には男性であろうと、女性であろうと我々人間は動物であります。生き物の生態に影響を与える刺激と言うものは、それなりに負荷が大きいものでなければ刺激にならないわけですね。

従いまして、男性やスポーツ選手と全く同じように一般的な女性がトレーニングする場合にもあなたに対して過負荷になるかどうかがポイントになってきます。

過負荷の定義は少し曖昧でありますが、非日常的なきつさ、普段はあまり感じないきつさ、日常生活の中ではそのようなきつさは体感しないけどトレーニングをやり初めて、これ結構きついよねとトレーニングしている部分に効いたということが分かるくらいのきつさをかけていかないと体は変化をしていかないということです。

これは生理学的に決まっていることなので、かならず過負荷の原理に合うように運動に取り組んでいただきたいと思います。

どのようなものが負荷になるのか?

負荷の種類についは、重さ・速度・回数・セット数・インターバル(休憩時間)などがあります。

重さは、筋肉に抵抗を与えるモノの重量でダンベルやプレート、ペットボトル、その他重量物の重さ、あるいは自分の体重などです。それをどのくらいの重さにするのかといったことです。

速度は動作の時に動かすスピードですね。

回数は、動作を何回できるかという反復回数。

セットは、反復回数のひとまとまりのことで、それを何セット行うのか。例えば、10回を2セットやるとか、20回を3セットやるといったことです。

インターバルは、セットとセットの間に取る休憩時間のことで、それをどのくらい取るのかといったことです。

このような負荷をコントロールしていくことによって過負荷をかけていきます。

例えば、インターバルが短くなれば、それだけ回復する時間が短くなるわけですから、体はきつさを感じることになります。

このきつさを感じているという感覚が刺激となって筋肉に適用を起こす状況を作っていくことになります。

どのような種目を選べばいいのか?

種目の選び方にはいろいろな手法があります。

私たちの体は、いろいろな刺激に対してみごとに適応します。中でも筋肉の適応の仕方というのは、非常に特異的で負荷を受けた部分だけが変化を起こしていきます。

従いまして、体を引き締めると言うことに関して言えば、全身を細く引き締めていくことを考えていきますので、まずは体幹や体軸の強化メニューからはじめます。

美しい体のラインを作るための基盤、基軸になる身体の軸を一本パシッと作る必要があるのです。そのために体幹・体軸の強化が最初に行うべき運動のパターンになります。

まずは腕立ての姿勢をキープする体幹トレーニングから始める

どういったものがあるのかと言うと、例えば腕立て伏せの姿勢で静止する方法。アームスタンディングやプランクなどと呼ばれますが、腕立ての形で体の軸を崩さずに真っ直ぐの姿勢を作ってキープする種目です。

アームスタンディング

私たちの体は通常立位で立っている時には、重力と骨格とがうまい具合に平行になってバランスで立っています。そのバランスによって体重を支えているわけですが、この支えているものが骨格と平行であればあまり筋肉が緊張しなくてもある程度の力でわりと楽に立つことができます。

ところが体が傾いたり、歪んだりすると重力のラインから外れていきますので、途端に筋肉が反射を起こして緊張状態に陥ります。何しろ人間は長さと重さを持っているわけですから、真っ直ぐに立っている以外のポジションになった時には、腰が反ったり、お尻が持ち上がったりします。このように姿勢の変化を起こして適用しようとしますが、それを真っ直ぐの姿勢のまま、美しい姿勢を保ったまま腕立ての形になることが一つのポイントとなります。

バリエーションとしては、片脚を浮かす方法があります。浮かす時も後方へ真っ直ぐに上げる方法もあれば、横に蛙のように脚を開いていく方法もあります。

>> 女性にもオススメ。体幹トレーニングの入門種目「アームスタンディング(初級プランク)」の方法と効果

色々な方向に上げることによって、いままで両手両足の4点で支えていたものの支点が減るわけですから体は歪みやすくなるわけですね。歪みやすくなる状態の中で筋力で歪まない状態を作ってあげる、これが筋トレになるわけです。

脚を上げるパターンもあれば手を上げるパターンもあります。いずれにしても4点で支えるものを3点、2点というように減らしていくことによって非常に運動強度が上がっていきます。そのようなところから始めると短時間でも全身にトレーニングの効果が得られます。

ところが継続して、ずっと続けていくと最初はたかだか10秒や20秒でもかなり難しかったものがほとんどの方はわりと短期間のうちに1分や2分という分単位で姿勢を取ることができるようになってきます。そうなるとかなり強くなっているという一つの証拠でもあります。

部位別の強化メニューを加える

体幹や体軸の強化メニューを行い、わりと腕は引き締まってきたけど、まだ太ももがちょっとプヨプヨしている、あるいはお腹の前側は凹んできたけどわき腹のところはまだ“たるみ”がある。このように運動の効果が見られるがゆえに発覚してくる、あまり変化をしていないという、いわば自分の弱点が目立ってきます。

その段階にきたら、部位別の強化メニューを加えていきます。

例えば、わき腹にトレーニング効果があまり出ていないと分かったら、今度は片手におもりを持ってサイドベンドという種目を行い、ピンポイントでわき腹に照準を絞ったトレーニングメニューを進めていくんですね。

このように自分がもっと変化を起こしたい部位に特有の筋トレ種目がありますので、それをこの段階で入れていきます。

部位別の筋トレ種目はこちら>>

これが最初から全身の部位に、腕のトレーニング、お腹のトレーニング、胸のトレーニング、脚のトレーニングと言うことで部位別にそれぞれ当て込んでやっていった場合に同じように発達するかどうかは分かりませんので、運動はしているんだけれども筋トレ効果が出にくい、見えにくいといったことがあったりします

これが体幹トレーニングからスタートすることによって、比較的早い段階で自分の強いところ、弱いところ、変化しやすいところ、変化しにくいところが非常に見えやすくなります。

そして体幹、体軸トレーニングは、特別な道具を必要としませんので自宅でも簡単にすることができます。

ぜひ、女性の方々には体幹トレーニングや体軸の強化トレーニングを最初に取り組んでいただいて、自分の体がどのように変わっていくのか、どの部分に効果が出やすいのかということをしっかり認識していただきたいと思います。

その中で変化しやすい部分については、体幹、体軸トレーニングを続けていけばいいですが、筋トレ効果があまり見られないような部分、下腹部であるとか、わき腹であるとか、あるいは二の腕の裏側であるとか、このような部分については、その部分を引き締めるための特別なメニューというものを部位別に選択して取り組むことが非常におすすめできる方法であります。

女性が取り入れやすい負荷・強度の上げ方

体幹・体軸の強化メニューの中では特別な動きはありませんので、自分の体の重さとか、体の長さ、そういったものがトレーニングの負荷になります。

一つの考え方としては、腕立ての姿勢でキープする方法が慣れてきたら、手をついている位置を前方に伸ばしていってバレーボールのブロックのような形にすれば、体幹はさらにきつくなることになります。このように姿勢を変化させることによって体幹・体軸の強化メニューというものはレベルアップしていくことが可能になりますので、まずは取り組んでみられたら良いと思います。

そして、次の段階に入って部位別の強化メニューを付け加えていくとした場合には、動かす速度も負荷になります。最初は無理のないようにゆっくりとした動きから必ず始めて下さい。

動きに慣れてきて、ある程度反復回数がこなせるようになってきて、そして自分でそれなりに強くなったことが自覚できるようになったら、その同じ種目で同じ動きだけれども、運動の速度だけを速くします。

今までは1分間で20回やっていたところ、速度を速くすることで30回にする。1分間自体は変わりませんが、反復回数が増えることによって運動の速度が上がっていることになります。このようにして負荷を上げていきます。

そして、自分の体の変化がどのようにみられるのか確認して下さい。経過観察を行っていくことによって、自分の体は重さでトレーニングした方が変化しやすいタイプなのか、あるいは運動の速度でトレーニングした方が体が引き締まったなど変化が分かりやすいのか、あるいは反復回数によってコントロールするのがいいのか、このようなタイプと言うものが必ずあります。

ちなみに私(森部先生)の場合は、重いトレーニングそのものよりも、ある程度反復回数をこなしてスピードを上げてやった方が自分の体が変化しやすいと言うことが分かっています。

必ず、一人ひとり特徴がありますので、自分に合ったトレーニング方法というものを、少しずつ時間はかかりますが確実につかんでいく必要があります。

いま説明したのは、体幹のトレーニングから始めて弱点が見えるようになってきたら部位別の強化を加えるということで、お話しをしましたが、体幹・体軸の強化メニューから部位別強化メニューに上がった時点で部位別のトレーニングだけをすればいいと言うことではありませんので、そこは誤解をしないようにして下さい。

必ず体幹トレーニングはずっと並行して行いながら、あまり変化が見られない部分について部位別の強化メニューを加えるという考え方になります。

これはトレーニングの原理の中で言う可逆性の原理というものが常に働いているわけで、せっかく筋トレをして運動の効果が得られたとしても、その種目を外したことによって体は元の状態に戻っていってしまいます。

ですから、一度得た効果と言うものは失わないように、ベースとなるものはしっかりと行いながら、少しずつ上乗せをしていくことになります。

運動にあてられる時間が1日の中で10分しかできないとか、20分しかできないとかいう、個人的な都合の中で全部やることはできなくなるかも知れませんが、毎日続けることによって今日のメニュー、明日のメニューという形で日替わりで(メニューを分割して)変化を加えることはOKですので、安心して取り組んでいただければと思います。

ぜひ、毎日取り組んで自分の肉体改造、美しいボディメイクに取り組んでいただきたいと思います。頑張って下さい。

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筋トレTV 出演・動画監修 森部昌広 先生
九州共立大学 経済学部准教授・経済経営学科スポーツビジネスコース主任・サッカー部部長、一般社団法人全日本コンディショニングコーチ協会代表理事、一般社団法人日本メンタルトレーナー協会理事、九州大学非常勤講師(健康・スポーツ科学)、財団法人福岡県スポーツ振興公社スポーツアドバイザー、株式会社GET専務取締役、アイ・エム・ビー株式会社取締役、森部塾塾長