初心者向けのプランクとして、体力が低い人や女性が体力を付けるための導入種目として取り入れている「アームスタンディング」。腕立ての姿勢を保持するだけの筋トレですがポイントを抑えて正確な方法で行わなければ十分な効果を得ることはできません。今回は、アームスタンディングの基本姿勢をおさらいして、そこから漸進的に強度上げていく方法として、体幹強化のバリエーションをご紹介していきます。
強度を上げて効果を引き出していく
自宅でできる体幹トレーニングをご紹介してきます。
腕立て姿勢をキープする「アームスタンディング」
まずは、床の上に腕立て伏せの形になるところから始めてみましょう。これが体幹トレーニングの基本的な種目(アームスタンディング)になります。
腕を床に対して垂直に立て、足を遠くの伸ばしたら両足を揃えます。
よく起きるのは、頭が下がってしまう。それから腰が反ってしまう。一見真っ直ぐに見えるが、少し膝が曲がっている、こういったところは注意をしなければいけません。
このトレーニングで主に強化できるのは、まず体重を支えていますので腕、肩、そして体幹そのものである胴体の部分、腹筋群、太ももの筋肉、さらには背中の筋肉まで同時に収縮しています。
我々の体は長くて重たいので、その体を真っ直ぐに伸ばしておくことは非常に困難になります。
従いまして、まずは基本的なところとして、体幹トレーニングの中でも負荷が低いアームスタンディングから行っていきます。
頭の位置、肩、腰、膝、足首までをできるだけ一直線にします。ほんのちょっとしたところですが、踵が開いてしまったり、つま先が外側に広がってしまう方もいますが、基本的には両足を揃えるようにして下さい。
それから足首の位置ですが、踵を突き出してしまうと運動が楽になってしまいます。そうならないために足首の角度は90度で固定するようにします。(踵が真っ直ぐ天井を向いた形)
また、お尻を持ち上げることも楽な姿勢になりますので、持ち上げずに真っ直ぐの姿勢をキープするようにします。
肩甲骨を寄せる動きを加える
アームスタンディング(プランク)が十分にコントロールできるようになってきたら、形はアームスタンディングのままで肩甲骨だけを稼働させる運動を行います。
腕立ての姿勢は同じです。この状態から肩甲骨のみを稼働させていきます。
肩甲骨を動かす時に背骨の方に近づけた(肩甲骨を寄せた)ときに腰まで緩んでしまう方がいます。そうならないようにしっかりと体幹部分を固定させて胴体を動かさない(真っ直ぐに固定させる)ことが非常に重要になってきます。
動かすのは肩甲骨の部分だけです。肘は曲がらないように真っ直ぐに伸ばしたまま正確に行って下さい。
ここまでがコントロールできるようになったら、さらに発展形として運動の強度を上げる方法です。
片足を上げる
アームスタンディングでは、両手両足の4点で支持していることになります。今度はその指示ポイントを少しずつ少なくしていきます。
スタートのポジションはアームスタンディングと同じです。この姿勢から片足を浮かします。
浮かした時に腰が反ってしまわないように注意をして下さい。
十分にコントロールできるようになったら、運動の持続時間(キープする時間)を増やしていきます。最初は固定するところからはじめますが、固定をして持続時間を長くすることができるようになったら今度は少し稼働させてみましょう。
片足を上げて稼働させる
片足を浮かした状態で太ももの付け根から動かしていきます。膝から先が曲がってしまわないように膝を伸ばして状態で稼働するようにします。
片足を浮かすことによって、逆側の支えている軸足の太もも、大腿四頭筋、浮かしている側は太ももの裏、ハムストリング、それからお尻に筋肉、臀筋が主に収縮をしています。体幹だけでなく、これらの筋群にも効果が表れますので、必ず左右対称に同じ時間、または同じ回数行うようにして下さい。
足の幅を広げて、片足を浮かす、稼働させる
次は、足の幅を広げて行う方法です。
両足を開くことによって体の中心軸から支えているポイントが横に広がることになります。4点着いている状態では楽に感じますが、この状態で片足を浮かすとウエスト部分に非常に強いねじれの力が加わります。
これは体の中心から支点が遠ざかることによって、そこから大きなモーメントが起きることになりますので、すごく強い力が加わります。
例えば、野球、ゴルフ、テニス、このような体をひねる競技をやっている方には運動の補強にもなります。
手順としては、まずは足を広げて止まるところからスタートします。
基本の姿勢から足を大きく広げて固定します。肩甲骨を動かしても体幹が折れないこのコントロールをしっかりとやってください。
これを十分こなせるようになってきたら、今度は体の軸が左右にブレないように注意しながら一箇所に固定した状態で足を浮かしていきます。
自宅の中でやる時には床面にテープを貼ったりして、自分の体の中心軸を合わせてあげると運動はやりやすくなります。意識を体の中心からブレていかないように注意をして行って下さい。
固定ができるようになってきたら、今度は稼働させます。
足を上げて床に下ろす時には、床に着いて構いませんが着いて休んでしまう時間をできるだけ短くしましょう。足が触れたらすぐに持ち上げるようにします。
トレーニング中にはできるだけ脱力する時間を短くしてあげた方が運動の効果は上がってきます。大きなダイナミックな動作で行うとどうしても体幹の軸までブレてしまう可能性が高くなりますので、体幹の強化を意識する場合にはできるだけ小さな動きで行うことをおすすめします。
間違ったパターンとしては、ダイナミックな動きが大きくなりすぎて体の軸まで動いてしますケースです。これを避けるために体幹をしっかりキープしたまま、小さな動きで行います。
このように支点を一つずつ少なくしていくというのは、非常に有効な運動強度の高め方になります。
腕を持ち上げる(浮かす)
今度は腕を持ち上げる(浮かす)方法です。両足と片手で体重を支えるパターンになります。
足を大きく開いたアームスタンディングの姿勢から片手を浮かします。浮かす時にどうしても体の中心軸を片方の腕に乗せて軸をずらすことによってテコで上げやすくしてしまう傾向がよくあります。これは非常にもったいないです。
できるだけ体の軸がぶれないようにしながら、そこから片手を持ち上げていきます。持ち上げたらキープします。逆側も同じように行います。
手を高く持ち上げていこうとすると腰から反らしてしまう傾向がありますので、それを無くして頭から足首まで一直線のベースをしっかり作りながら、肩の関節可動域が許す範囲でできるだけ高いところに持ち上げます。
腕を持ち上げた時には、親指が天井を向いた状態(腕を回外させた状態)で高く持ち上げていくようにするとよいでしょう。
手の甲が上を向いた状態では肘が曲がりやすくなったりしまうので、肘を真っ直ぐに伸ばして親指を上に向けて、そこから上げていくようにします。
鏡を床に置いて行うと軸がぶれているか、いないかの姿勢を確認することもできますので、いろいろと工夫しながらやってみられるとよいでしょう。
2点の支持で強度を高める(キープする)
最初の基本姿勢からいきますと、両手と両足の4点で支えていたものを両足と片手、両手と片足のそれぞれ3の支点で体重を支えるやり方をやってみました。
それが楽になってきた場合には、2点の支持でさらに強度を高めることができます。
動きとしては、対角線のパターンで動作を作っていきますので、手を上げる、足を上げる、この動きを片足と片手を対角線のパターンで持ち上げていくことになります。
他の種目と同じように軸がぶれないように注意して下さい。
対角線をしっかりと作ってやることによって、体の軸を左右にブラさずにしっかりと姿勢を作ることができます。
どうしても腕力、脚の力と言うものが強くなければなかなかこのフォームを作ることができませんので、少しずつ段階を追って進めていって下さい。
このパターンができるようになってきたら今度はそこに少し動きを加えていきます。
2点の支持で強度を高める(動きを加える)
対角線に上げた足と手を胴体の下でクロスさせていく方法です。「クロスタッチ」と言います。
持ち上げて少しずつ縮める、対策線でクロスして元に戻す。これを繰り返します。
上げた時は、必ず一回一回対角線で大きく伸ばすようにして下さい。上げた時に腰をあまり反らさないようにします。できるだけ真っ直ぐな状態を作ります。
そして、対角線で肘と膝をクロスしていくわけですが、股関節と肩関節だけを動かして小さな動きではなく、できるだけ背骨そのものを大きく使って、大きな動きを作ってあげるようにするといろいろなスポーツにも応用が利きます。
例えば、ボールを投げる競技、ラケットを振る競技、サッカーのようにボールを蹴る、こうした動きの中では普通に使っている動きになります。対角線のパターンを作るためには非常に有効な種目になりますので、この対角線で行う「クロスタッチ」をしっかり行うようにするとよいでしょう。
最初は少ない回数から少しずつ増やしていくと徐々に回数を増やしていくことができるようになります。
慣れてきた場合には、ゆっくり動作していたものを少し早く動かすようにしてあげると、さらにスポーツ競技への応用が利くと思います。
これは左右対称に行えるようにして下さい。左手と右足、右手と左足、それぞれの回数を比較してどちらの方が楽にできるのか、どちらの方が難しいのか、そこを各自ジャッジして弱い方から行うようにします。そして、反復回数を揃えてください。
ちょっと細かな部分になりますが、回数だけの場合ですと左右差が出てくることがよくあります。例えば、同じ10回ずつやっているすんですが、左手と右足をタッチする場合には12秒かかったと、右手と左足15秒かかったという場合では経過時間が違います。
できれば回数と時間どちらも揃えてあげた方がいいですので、やはりこの場合も弱い方から進めていく(強い方は回数も時間も合わせるように努力する)、そして左右差を無くしてやがてはどちらも同じ回数、同じ時間でできるようにしてあげると非常に左右のバランスが取れて、いろいろな動きに応用ができますので、しっかりと頑張ってください。
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筋トレTV 出演・動画監修
森部昌広 先生
九州共立大学 経済学部准教授・経済経営学科スポーツビジネスコース主任・サッカー部部長、一般社団法人全日本コンディショニングコーチ協会代表理事、一般社団法人日本メンタルトレーナー協会理事、九州大学非常勤講師(健康・スポーツ科学)、財団法人福岡県スポーツ振興公社スポーツアドバイザー、株式会社GET専務取締役、アイ・エム・ビー株式会社取締役、森部塾塾長