一定の年齢を過ぎると筋力の低下、筋肉の減少、体力の低下など肉体的な衰えが始まるとされています。特に高齢者層に入ってくる年齢になるとその衰えは顕著になり、自覚できるようになります。しかし、何も対策しないでいては衰えていくばかりです。そこで今回は体力アップを図り、怪我や骨折をしない体を作る転倒予防の運動・トレーニングをご紹介します。
椅子に座って行う転倒予防トレーニング
高齢者の方が自宅でできる安全な転倒予防のためのトレーニングをご紹介します。
転倒予防を可能にするために強化して欲しいところは、全部で3つあります。
足の指、股関節周辺、それから太ももの筋力です。この部分をしっかりトレーニングしておくことによって何かにつまずきにくくなったり、仮につまずいたとしてもしっかりと踏ん張って転倒を予防することが可能になります。
これは日常生活の中で簡単にできる運動ですので、ぜひ覚えて日々少しずつでも実践していただけたらと思います。
足の指を強化する運動
まず、椅子に腰かけて足の指の強化からはじめます。足の指ですので、足の指以外は着かないように意識して下さい。
上半身を折り曲げて、肘を膝の上に乗せ、このような状態で足の指だけで体重を支えます。
そして、足の裏全体を床から浮かす、少し下ろす、この繰り返しを行っていきます。
間違っていけないのは、拇指球の部分は床に着けないということですね。拇指球を軸にして行うのではなく、足の指、足の腹の部分を軸として運動が行われています。ここに注意をして下さい。
このトレーニングに慣れてきたら、運動の強度を上げていく必要がありますので、片方の足に体重をかけて片脚ずつ行うようにします。必ず、左右同じ回数行って下さい。
このようにして足の指を強化していきます。
普段はあまり意識をしていないところなので、急に行うと痛くなったり、怪我をしてしまうことがないとは言えませんので、少しずつ進めていくことをお勧めします。
股関節周辺を強化する運動
足の指を強化しましたら、股関節周辺もトレーニングする必要があります。
これは何かにつまずいた時に、もう一度グッと脚を持ち上げてステップを踏んで踏ん張るために股関節が機能していないとそれがうまくできません。
そこで、足の指と股関節をミックスしてトレーニングする方法をご紹介します。
最初に行った足の指のトレーニング(片足ずつ行う方法)で、何もやっていない方の足全体を引き上げた状態にして、足指で行った方法と同じように動作を行います。
そうしますと、着いている側は足指のト運動、浮かしている側は股関節の運動を行っていることになります。
このようなトレーニングを行ったのちに、今度は股関節をさらに多くトレーニングしてあげます。
両肩の上に手を置きまして、膝をできるだけ高く上げます。この時に体があまり後ろに倒れてしまわないように注意して下さい。
姿勢はできるだけ体幹を椅子に対して垂直に起こした状態を保つようにします。そこからできるだけ高く膝を繰り返し上げていく運動を行っていきます。左右同じように行いましょう。
そして、股関節と言うのは球関節なので非常に大きな可動域を持っています。そのため、上下に動かすだけでなく、膝の先端で円を描くような動きも取り入れて下さい。
この運動で注意しなければいけないのは、小さな円を描くということですね。
一番高く引き上げたところから、その上に小さく円を描く。そうすることによって、股関節の周辺部の筋肉を収縮させた状態で、つまり断面積をできるだけ大きくした状態で安全に運動することができます。
大きく動かすと非常にダイナミックな感じがしてトレーニングをしているような感じがしますが、実際には膝が大きく動くことによって筋肉は緩いんでいる部分が多くなってしまいます。
ですので、運動の負荷を高くするために小さな動きを最初は心がけて、筋肉があまり緩まないように注意して下さい。
太ももを強化する運動
股関節周りをトレーニングしたら、太ももの筋肉をトレーニングしていきます。
この筋肉が何のために重要かと言いますと、一番ポイントになってくるのは階段を下りたり、椅子に座っていくとき、膝関節が曲がる方向に力がかかるときに耐えるための筋肉だということです。
太ももの筋肉が弱っていると、関節の軟骨がすり減った時に骨と骨がこすれ合うような可能性が高くなってしまいます。
従いまして、太ももの筋肉を鍛えるということはとても重要になってきます。
トレーニング方法については、先ほど行った股関節周辺のトレーニングと同様に、膝を一旦できるだけ高く持ち上げて、その状態から今度は太ももの筋トレなので膝を真っ直ぐに伸ばします。
真っ直ぐ伸ばして止めるだけで、体幹部、それから太ももの前側・大腿四頭筋は非常に強く収縮することになります。
この状態から高く持ち上げていく動作を繰り返していきます。
やってみると分かりますが、太ももの部分に非常に強い負荷がかかっていることが分かります。
上げた脚は床よりも高い位置で行うようにします。このようにすることによって太ももの筋肉をできるだけ強く収縮させることが可能になります。
そして、やはり股関節なので太ももの付け根周辺から動かしながら今度は円を描くような動きも加えてみて下さい。
トレーニングの方法としては、時間を決めて例えば10秒間で何回できるか行ってみたり、あるいは回数を決めて10回を何セットか行うといった方法でも構いません。
必ず、右脚左脚どちらも同じ回数、もしくは同じ時間、そして同じセット数行うようにして左右のバランスとっていきましょう。
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筋トレTV 出演・動画監修
森部昌広 先生
九州共立大学 経済学部准教授・経済経営学科スポーツビジネスコース主任・サッカー部部長、一般社団法人全日本コンディショニングコーチ協会代表理事、一般社団法人日本メンタルトレーナー協会理事、九州大学非常勤講師(健康・スポーツ科学)、財団法人福岡県スポーツ振興公社スポーツアドバイザー、株式会社GET専務取締役、アイ・エム・ビー株式会社取締役、森部塾塾長