上腕二頭筋、いわゆる力こぶを強く、大きくしたいと思って筋トレをしているけど、なかなか変化しない、続けていくうちに肘が痛くなるといったことが往々にして起こります。それは何故なのか?方法が間違っているのか?バーベルカールの正しいやり方を通じて、そのメカニズムを掘り下げます。
力こぶを鍛えるバーベルカールの方法
上腕二頭筋(力こぶ)の筋トレである「バーベルカール」の解説をしていきます。
バーベルカールは、非常にポピュラーな種目で筋トレ経験者であればほとんどの方がやったことがあると思います。
単純にバーベルを握って上腕二頭筋を収縮させるトレーニングです。肘関節を曲げる動きになりますが、基本的にはストレートバー(バーベルシャフト)を使って行うというのが基本になります。
グリップの握る幅はすべてバリエーションになります。狭く持つ、肩幅ぐらいに持つ、それよりもやや広く持つ方法などがあります。
どこを持っても構いませんが、最大収縮のポイントで自分の力こぶの部分に一番収縮感があるような幅を探すことが基本なります。
基本的な方法とポイント
握る幅を決めたら、しっかりとバーベルを掴み(肘を曲げて)上げ下ろし動作を行います。
動かす可動域は、下に下ろしたときに完全に肘が伸びていないというところを注目してみて下さい。
このように下ろしたときに完全に肘が伸展(伸びて)していないということが分かると思います。
何のためにそのようにしているのかというと、手にバーベルやダンベルをぶら下げたときに肘を真っ直ぐに伸ばしている状態だと上腕二頭筋には全く力が入っていません。ところが、ほんのちょっとでも上腕二頭筋を短縮させて、肘関節を屈曲させていくと、張力が発生し、どんどんきつくなっていきます。
一番きつくなるのは、肘を曲げていき前腕の部分が床と平行になったときです。上腕骨に対して肘関節がちょうど90度のポジションにきたところ、ここが一番きつくなるポイント(スティッキングポイント)になります。このポイントを過ぎると(通過すると)楽になっていきます。
動作中は、重さそのものは変化していませんが、自分の体感としては、少しずつ重くなってきて90度を通過するとちょっと楽になるわけです。
同じ力を加え続けると、極端に言うと動作スピードが途中で変化することになります。あるポイントではゆっくり、あるポイントでは少し早く動く形でスピードにむらが出てきてしまうことになります。
トレーニングジムやスポーツジムに行くと、インストラクターの方がスピードをコントロールしてやるようにと指導されます。
トレーニングを始めたばかりであれば、そんなに力が強くないため、トレーニング効果としては先に筋力が強くなっていきます。これは怪我をせずにトレーニングすることができることを意味しています。
ただ、だんだん強くなってくるとバーベルにプレートを増やしていくことになりますが、そのような段階にきたときに問題が生じる可能性が高くなります。
肘関節を曲げるカール動作で多くの方が経験する怪我は、上腕二頭筋は前腕の骨にくっついている部分、腱の部分を痛めるケースが非常に多くて、逆にそれ以外のところはほとんど痛めることがありません。
どうしてそのようなところを痛めることになるのかというと、持てないギリギリくらいの重さになったときに踏ん張って一生懸命上げようとしますが、そのときに上げられるポイントまで無理やり通過させて下ろす時だけゆっくり下ろすというトレーニングまでやって、それでも可動域を犠牲にしたくないというトレーニングを続けていくと、肘関節の腱の部分にダメージが蓄積していってしまうことになるわけです。
筋肉の部分は血液が通っていますので回復が比較的スムーズに進みますが、腱のところは強いのですが血管が走っていませんので疲労が回復するのが遅れてしまいます。
怪我をしないうちはいいわけですが、一旦怪我をしてしまうと回復するまでに時間がかかってしまいますから、せっかく筋トレをしてレベルが上がってきたのに一時的にでも自分の体を守るためにトレーニングから離れなければいけないというような重大な怪我に繋がってしまう可能性も高くなります。
したがって、下ろしたときに肘を完全に伸展させない、少し肘が曲がっている状態でトレーニングを行うようにします。この可動域の中で動作することをおすすめしています。
ピンポイントで刺激すると同時に怪我を防止する方法
さらに安全にトレーニングを進めて、なおかつとにかく上腕二頭筋を強くしたい、太くしたいという目的の場合はもっと可動域を狭くして限定的に行った方が筋トレ効果は高くなります。
もともと上腕二頭筋は、何のための筋肉なのかということを考えると、これは肘関節を曲げるための筋肉なんですね。
どの部分が一番強いかというと、90度の角度よりも内側で動く範囲(狭い範囲)であれば、上腕二頭筋の断面積が大きくなり安全にトレーニングすることができるわけです。
肘が伸びて、肘関節が広がっていくと上腕二頭筋の盛り上がりが薄くなっていきます。そうすると断面積は少し縮小していることが分かります。
短縮している状態(肘を曲げた状態)では盛り上がっているので面積が大くなりますが、筋力は断面積比例しますので、安全にトレーニングするのであれば90度の角度よりも内側でトレーニングする方が確実に安全であると言えます。
したがって、さらに極端にやろうとすると、まずはバーベルを上に上げたところからスタートし、そこから90度まで下ろします。この範囲の中で動作を行います。これだと怪我を防止でき安全に強いトレーニングをすることができます。
動かす時には基本的にあまりスウィング動作を使わないというのが上腕二頭筋強化のためには基本になります。
他の部位をトレーニングするときもそうなんですが、特定の部位の筋肉を発達させたい、その部分の力をつけたいというのであれば余計な動作を挟まずにその部分にだけ集中させて負荷をかけるということの方が理にかなっています。
スポーツパフォーマンスアップに応用する場合は工夫が必要
ただし、例えば柔道で相手も掴まなければいけないとか、レスリングで相手をタックルで倒さないといけないとかいう、自分の体にできるだけ相手を引き付けなければいけないような動作をする競技スポーツの場合だと相手を近づける、相手を抱きかかえる・倒す、こういった動作の時には腕の力だけでパフォーマンスを発揮しているわけではありませんので、全身の力を使うというところから考えると上腕二頭筋のトレーニングだからということで二頭筋だけに集中するようなトレーニングは競技スポーツ向きではありませんので、そこは区別をして考えて下さい。
何のために筋トレをするのか、まずは体づくりなど基礎的な筋力を作るためなのか、競技スポーツへの応用、展開のためなのかということで少しやり方が変わってきますので、その点は少し注意が必要になってきます。
参考までに少しやっておきますと、例えば競技スポーツで大きな力を出さなければいけないという場合には、先ほど解説した狭い範囲の中で動作するのではなく、スポーツに応用する場合には体の反動も使いながら、なるだけ楽に大きな力を出すような「使い方」というのを覚えていく必要があります。
競技特性を考えたものか、体づくりを考えたものかということで、まったく目的が変わってきますので、当然方法も変えるのが正しいのです。
よって、前半で解説した方法は、とにかく上腕二頭筋を強くしたい場合の筋トレ法、そして今解説した方法は大きな力を出来るだけ瞬間的に楽に出すためのやり方ということで説明しました。
ぜひ、何度も動画を見て復習をしていただいて、あなたのトレーニングに役立てていただければと思います。
筋トレTV 出演・動画監修
森部昌広 先生
九州共立大学 経済学部准教授・経済経営学科スポーツビジネスコース主任・サッカー部部長、一般社団法人全日本コンディショニングコーチ協会代表理事、一般社団法人日本メンタルトレーナー協会理事、九州大学非常勤講師(健康・スポーツ科学)、財団法人福岡県スポーツ振興公社スポーツアドバイザー、株式会社GET専務取締役、アイ・エム・ビー株式会社取締役、森部塾塾長