大胸筋を効果的に鍛えるための「ダンベルフライ」のテクニックを解説・実演します。動作中に腕のひねりを加えることで、一般的なダンベルフライに比べて大胸筋への収縮がさらに入ります。一般的な方法を継続していく中で成長が伸び悩んだ場合などに新たな刺激策として取り入れるとよいでしょう。
鍛えられる筋肉
第1ターゲット ・・・ ■大胸筋
ひねりを加えたダンベルフライのやり方
通常のダンベルフライは、ダンベルの向きを平行または平行近くで固定して動作しますが、大胸筋の伸縮を意識したダンベルフライでは固定せずに、ダンベルの向きを変動させながら動作します。(実際にはダンベルと言うよりも、関節の動きが変動)
どのようにするかと言うと、”ひねりを加える”のです。
ひねりを加えることで、動作全体を通じて大胸筋に強い刺激を加えることができます。
スタートポジションは通常のダンベルフライと同じです。
- ベンチに仰向けになり、肘を伸ばしてダンベルを持ち上げます。手をひらを向い合せて、ダンベルを平行にします。これがスタートポジションになります。
次から、通常の方法とは違い”ひねり”を加えていきます。 - 腕を広げながら、小指を下に向けていくようにして腕をひねっていきます。広げ切ったら完全に小指側が下を向きます。
この時、大胸筋が十分に伸びていることを意識しましょう。 - 今度は腕を閉じながら、小指側を向い合せるようにして腕をひねっていきます。閉じ切ったら、小指側が向かい合った状態になります。
- 2~3を同様に繰り返し、所定の回数反復します。
なお、初心者が取り入れるのは注意が必要です。
基本的なフォームが整わないまま行うと、うまく効かせられないばかりか、怪我を招く危険があります。
初心者は、通常のダンベルフライを習得してから、ひねりを加えるテクニックを使うようにして下さい。
なぜ、ひねりを加えることで大胸筋に強い刺激を加えることができるのか?
閉じた(上げた)時に小指側が向かい合うようにしてひねると大胸筋の収縮が強くなります。
逆に、開いた(下ろした時)時は小指側が下に向くようにしてひねることで大胸筋のストレッチ感が強くなります。
つまり、ひねりを加えることで動作全体を通じて筋繊維をすみずみまで動員させることができ、通常の方法では得られない刺激を大胸筋に与えることができるのです。
元々、ダンベルフライは腕を広げることで大胸筋が引っ張れ、強いストレッチ感が得られる筋トレ種目です。
そのため、筋肉痛が出やすい種目でもあります。
筋肉痛が出やすいのは、収縮しながら力を発揮する”コンセントリック収縮”に比べ、筋肉が伸びながら力を発揮する”エキセントリック収縮(伸張性収縮)”の方が、筋繊維に損傷を受けやすい特性があるためです。
⇒ 詳しくは「ネガティブレップ法でさらなる筋肥大を目指そう」をご覧ください
コンセントリック収縮は、力を加えるときに起こる筋収縮で、主に上げる動作、引く動作で起こります。
ダンベルフライでは、腕を閉じていくときに起こる筋収縮です。
エキセントリック収縮は、ブレーキをかけるようにして負荷に耐えながら動作するときに起こる筋収縮で、多くが下ろす動作や戻る動作で起こります。
ダンベルフライでは、腕を広げていくときに起こる筋収縮になります。
ひねりを加えたダンベルフライでは、さらにストレッチ感が得られます。
それにより、大胸筋への刺激が強くなり、筋肉痛も起きやすく、筋肥大についても良い影響を受けることになります。
もちろん、閉じる動作でも収縮が強くなるため、通常のダンベルフライよりも、強い刺激を入れることができ、効果が高められることになります。
ダンベルフライとは?
ダンベルフライは、両手にダンベルを持ち蝶の羽ばたきのように腕を広げ、閉じることで胸の筋肉・大胸筋を鍛えることができる筋トレ種目です。
大胸筋は”押す”動作によって収縮するため、押す動作が伴う種目は基本的に大胸筋が刺激されます。
ダンベルフライは、広げて閉じる動作なので一見押していないように見えますが、細かく見ていくと体に近いところ、または体の平行線に近いところから遠くに押して離していく動作なので、押す動作になります。
大胸筋をメインに鍛える種目には、ダンベルプレス、ベンチプレス、プッシュアップ(腕立て伏せ)などがあります。
これらの種目が、肘と肩関節の2つの関節が動作に関与する多関節種目であるのに対して、ダンベルフライは肩関節のみが動作に関与する単関節種目です。
ダンベルフライの実際の動作では、下ろしたポジション(ボトムポジション)では肘をやや曲げた形を取るので、多関節種目に思えますが、単関節種目になります。
なぜなら、肘を曲げるのは肩関節よりも弱い肘関節が重力に負けて無理な負荷がかからないように肘関節を保護しているに過ぎないからです。
また、ダンベルフライは、下ろす時に大胸筋をストレッチして刺激を加えること、そして上げる時に横方向からの負荷により刺激を加えることが目的です。
そのような刺激を加える動作には肘関節の関与は必要なく、肩関節のみで可能です。
つまり、ダンベルフライはたとえ肘関節を固定していたとしても、目的とする刺激(筋収縮)を入れることができるため単関節種目となるのです。
逆にベンチプレスはバーベルを上げるとき、大胸筋を垂直方向に刺激を加えます。
その時、肩関節の動作に加えて、必ず肘関節の動作(上げる時は屈曲位から伸展位に動作)が必要になります。
やったことがある人、やっている人は分かると思いますが、どちらか一方の関節を動かさなかったら、動作できません。
どちらの関節も動作に必須であることから、ベンチプレス、ダンベルプレス、プッシュアップなどは多関節種目となるのです。
ちなみに、ダンベルフライは、肩に近い部分が非常に良く伸びながら刺激されることから”大胸筋の横への広がりをつける”のに有効とされています。
一方、ベンチプレスやダンベルプレスは、垂直方向へ強く刺激されるため”厚みをつける”のに有効とされています。
また、ケーブルクロスオーバー(動画)といって立った姿勢で両手にケーブルを持ち、腕を開いたり、閉じたりする種目があります。
これは、横への広がりを作ることができるのはもちろんですが、”大胸筋内側の溝を作る”のに有効とされています。
なぜなら、ケーブルクロスオーバーは腕を閉じた時も負荷が逃げないため、内側を十分に刺激できるからです。
ダンベルフライの場合は、腕を閉じた時(上げた時)に大胸筋への負荷が逃げてしまうため内側の刺激については十分ではないのです。
しかし、ダンベルフライは比較的重いウエイトを扱うことができるのに対して、ケーブルクロスオーバーはダンベルフライほど重いウエイトを扱うことができません。
ケーブルクロスオーバーは、シートやベンチなどで胴体が固定されておらず、立位でウエイトに反発する形で動作します。
そのため、あまりウエイトを重くすると、(自分の体重にもよりますが)腕や体が後ろに引っ張られ、持って行かれてしまうんですね。
工夫すればできないこともありませんが、基本的にケーブルクロスオーバーは最後の締めとしてウエイトを落とし回数を少し多くして追い込む場合に用いるのがいいかと思います。
大胸筋の内側もしっかり刺激したい場合は、マシンであれば「ペクトラルフライ(動画)」、ベンチであれば「ナローグリップ・ベンチプレス」、自重であれば「ナロー・プッシュアップ」がおすすめです。
※ジムにはペクトラルフライに変えてペックデックというマシンを置いている場合があります。ペックデックは肘を90度程度に曲げて開閉動作を行うマシンで同様に内側を刺激できます。
※「ナローグリップ・ベンチプレス」、「ナロー・プッシュアップ」は、基本的には上腕三頭筋を鍛える種目ですが、大胸筋内側への刺激も強くなるため、大胸筋の種目としても用いられます。
さて、単関節と多関節の種目のお話しに戻します。
以上のように単関節と多関節は、角度や動作の違いにより刺激の入り方、筋肉の使い方に違いがあることが分かります。
このことから言えるのは、大胸筋をまんべんなく鍛えるためには単関節と多関節を組み合わせてメニューを組むのが有効だと言うことです。
組み合わせることで横への広がりと厚みを同時に作ることができ、かつ迫力があり、整った大胸筋を作ることが可能になるでしょう。
ダンベルフライを取り入れたメニュー例
メニューを組む際の基本的なポイントとしては、大筋群から小筋群、多関節種目から単関節種目の順番で行うことです。
⇒ 筋トレの順番について詳しい解説はこちら
大胸筋に焦点を絞ると、まず大胸筋は大筋群に属するので、その日のメニューとしては一番初めか、前半に持ってきます。
前半としたのは、その日のメニューに大筋群である下半身(太もも・大臀筋)も含めている場合は、下半身と大胸筋のどちらかが順番が後になるためです。
ここでは色々な部位の全体的なメニューではなく、大筋群である大胸筋の中で種目の組み合わせを決めます。
この場合、多関節種目から単関節種目の順番に注視して並べることになります。
筋トレ歴や目的によって変わりますが、ここでは一例として3種目を組み合わせて大胸筋を鍛えることとします。
オーソドックスな構成ですが、大胸筋の発達が顕著でなければ、十分に有効なメニューです。
- ベンチプレス またはダンベルプレス(多関節種目)
- インクライン・ベンチプレス またはインクライン・ダンベルプレス(多関節種目)
- ダンベルフライ(単関節種目)
このような構成になります。
2種目にする場合は、2種目めのインクライン・ベンチプレスを外して、ベンチプレス(or ダンベルプレス)とダンベルフライの構成になります。
ダンベルフライは、動画で紹介している”ひねるを加える方法”で行ってみましょう。
ただし、初心者は通常のダンベルフライを習得することから始めて下さい。
目標回数と頻度
- 【回数】10回×3セット
※セット数は、体力アップに応じて5セットまで増やすようにします。 - 【頻度】2~3日おき
※疲労度に応じて調節する
※場合によってはもっと空ける