体幹の末端に位置する首(胸鎖乳突筋)を鍛える方法「ネックフレクション」を実演・解説します。首の筋肉は脊椎を成す頸椎の保護、機能強化をはじめ、姿勢の安定、スポーツパフォーマンスアップなどにおいて重要な役割を担います。首の筋トレを取り入れて洗練された体づくりを進めていきましょう。



鍛えられる筋肉

第1ターゲット ・・・ 胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)

胸鎖乳突筋の機能と役割

首の筋肉を積極的に鍛えようとする人は少ないのではないでしょうか。

しかし、首の周辺には多くの筋肉が首の動きをサポートすると同時に保護する大切な部位なので、本来は疎かにすることができないのです。

このように首は大切な部分であるわけですが、その中でも一番外側(表層)に位置して触ることができる筋肉が胸鎖乳突筋です。

耳の後ろあたり(乳様突起)から前に向かってVの字を描くようにして胸の上部まで伸びています。首回りの筋肉の中では大きな筋肉になります。

胸鎖乳突筋の機能を専門的に示すと、胸骨柄、鎖骨近位部を起始として、側頭骨乳様突起に停止している筋肉です。
このことから分かるのは、胸鎖乳突筋は首の骨である頸椎に直接的に付着しているわけではないと言うことです。

つまり、留め金のようにして首を直接的に保護しているわけではなく、間接的に側面からサポートし、体幹の末端における首の機能を正常に保ち、保護する役割があるのです。

では、重要な筋肉ではないのではないかと言ったら、まったくの逆で胸鎖乳突筋は首を回したり、前に倒したり、日ごろ私たちが活動する上で当たり前のように行っている首の機能をつかさどっている重要な筋肉なのです。

首を鍛えて美しい姿勢づくりに

胸鎖乳突筋は、首を立てて頭部が後ろに傾かないように支える役目があるため、姿勢の安定や美しい姿勢づくりにも関わっています。

頭が後ろに倒れると顎~首が前に出た形になり、重心が前に移動します。
その結果、前に傾いた重心を元に戻そうと背中を丸めることでバランスを取ろうとします。

これが、いわゆる”猫背”です。猫背にはいろいろな原因がありますが、重心の乱れが猫背を引き起こす一因であることを覚えておいてください。

このように胸鎖乳突筋を強化しておくことは、重心バランスの乱れ、それに伴う姿勢の悪化を未然に防ぐことができると同時に、本来あるべき美しい姿勢を作り、維持していくことにつながります。

また、首が原因で姿勢が悪ったかり、猫背になっているのであれば、胸鎖乳突筋を鍛えることで首が立ち、重心の偏った傾きが正常になることで改善に役立つことになるのです。

姿勢の悪さが原因となっているような肩こりも、首を強化することで改善に繋がります。

ぜひ、姿勢の善し悪しに関係なく、どのような人も動画で紹介しいている胸鎖乳突筋の筋トレを習慣にしてみて下さい。
きっとやってて良かったと思える日がくることでしょう。

スポーツにおける効果

スポーツにおいては、首を守ることはもとより、首の強化が技術を補強し、実力を引き出すための大切なフィジカル要素となります。

具体的には、スピーディーな切り替えし動作が伴うスポーツでは動作の安定性を高めることができ、あらゆるコンタクトスポーツや打撃系格闘技においては脳へのダメージ低減および首の保護に貢献することになります。



ボディメイクにおける効果

ボディメイクの点からは、胸鎖乳突筋が外側に位置する筋肉(外から触ることができる筋肉)でありますので、首のラインにも大きく影響を与えます。

胸鎖乳突筋を鍛えることで、筋肉がほどよく浮き上がり立体感を作り出します。
それにより首のラインが綺麗に見え、全身のスタイルバランスが高められ、抜かりのないスタイルを作り出すことができます。

男女問わず、胴体と違って首の露出は年間を通じて多くあります。冬もマフラーを付けてなければ、多くの時間見えている部位であると言っていいと思います。

そのため、体づくりの洗練性がすぐさま露見する部分であると言えます。
胸鎖乳突筋が鍛えられていれば、身体の隅々に渡って神経が行き届いていることを示すことができるのでしょう。

ピシッとスーツで決めていても、靴がボロボロではすべての部分にマイナス影響を与えるのと同じです。

首が鍛えられていれば、他の部位も2割増しで輝かせることができると言っても過言ではありません。(もちろん、筋トレなど運動で他の部位にも気を配っていることが前提です)

筋トレでは、フォームへの影響を見過ごすことができません。姿勢の不安定性、悪さがフォームに影響し、負荷の分散、部位の微妙なズレを招き、ターゲットとする筋肉に十分な刺激を伝えられないといったことが起こり得ます。

その結果、筋トレの効果が損なわれるだけでなく、その積み重ねがボディメイクに影響してくることになります。

また、ネックフレクションのフォーム特性から得られる効果としては、腹直筋を収縮させ固定したまま首の動作を行うことから腹直筋や腹横筋が刺激され、お腹周りの引き締めにも効果が得られます。

一見、簡単なように見えますが、実際に行ってみると腹直筋の緊張を保持する必要性と相まって、とても体力を使う種目です。
首だけの効果に留まらず、お腹周りも引き締めることができる優れたトレーニングです。その効果を体感してみて下さい。

灯台下暗しである”首”。

なかなか鍛えることに目が届きにくい部位ではありますが、これまで述べてきた通り、多くの効果、メリットをもたらしてくれる大切な部位です。

首を鍛えて、本来あるべき身体、スポーツへの貢献、ボディメイク、スタイルアップ、筋トレ時の適切なフォーム・刺激など、あらゆる効果を享受して下さい。

ネックフレクションのやり方

ネックフレクションは、首を鍛える方法の中でも最もオーソドックスな種目の一つで、首にある筋群の中でも大きな筋肉・胸鎖乳突筋を鍛える筋トレ種目です。

胸鎖乳突筋の働きとしては、下を見るようにして頭を前に倒したり(頸椎の屈曲)、頭を横に倒すようにして首をかしげたり(頸椎の側屈)、横を向くようにして首を回す(頸椎の回旋)ときに働きます。

フレクション(flexion)は”屈曲”と言う意味で、ネックフレクションは、首を屈曲させる運動であることを表しています。
ちなみに、”伸展”はエクステンション(extension)です。例えば、脊柱起立筋を鍛えるバックエクステンションは、背中を伸展させる運動になります。

1.ネックフレクション(屈曲のみ)

屈曲動作を行う基本パターンです。

  1. 仰向けになり膝を立てます。
  2. クランチのように上背部を持ち上げ、腹直筋を収縮させます。腕は胸の前で組んでおきます。
    この姿勢がネックフレクションのスタートポジションです。
  3. この姿勢のまま、顎を上げて後頭部が床と平行になるまで頭を下ろします。
  4. 下ろしたら、顎を胸骨に付けるようにして十分に屈曲させます。顎を引くイメージでもOKです。
    この時、胸鎖乳突筋に刺激が入り、収縮した状態になります。
  5. 3~4を所定の回数繰り返し、これを1~3セット行います。

2.ローテート・ネックフレクション(屈曲+回旋)

屈曲した状態から回旋を行うバリエーションです。

  1. ネックフレクションのスタートポジションを取ります。
  2. 顎を胸骨に付けるようにして十分に屈曲させます。(顎を引くイメージ)
    この姿勢がローテート・ネックフレクションのバリエーションのスタートポジションになります。
  3. 屈曲させたまま、首を回転させます。頭が下がらないように(顎が上がらないように)注意しましょう。
  4. 可動域いっぱいまで十分に回す。
    ※慣れないうちは慎重に動作するようにしましょう。
    ※勢いをつけて回すと痛める恐れがあるので注意しましょう。ゆっくり回すようにして下さい。
  5. 逆側にも回して1回とカウントします。
  6. 所定の回数繰り返し、これを1~3セット行います。

2.ツイステッド・ネックフレクション(回旋+屈曲)

回旋させた状態から屈曲を行うバリエーションです。

  1. ネックフレクションのスタートポジションを取ります。
  2. 首を左右どちらかに回して保持します。
    この姿勢がツイステッド・ネックフレクションのスタートポジションになります。
  3. この姿勢のまま、顎を上げて顔の中心線がが床と平行になるまで頭を下ろします。
  4. 下ろしたら、顎を鎖骨に付けるようにして十分に屈曲させます。
    この時、胸鎖乳突筋が最大収縮した状態になります。
  5. 3~4を所定の回数繰り返します。
  6. 少しインターバルを取って逆側も同様に行います。
  7. 逆側も行って1セットとカウントし、これを1~3セット行います。

目標回数と頻度

  • 【保持時間】60秒(or 50回)×1~3セット
    ※60秒間連続でできない場合は10秒×6回など分割して行い、合計60秒になるようにします。
    ※50回連続でできない場合は10回×5回など分割して行い、合計50回になるようにします。
    ※片側で行う種目は左右行って1セット。
    ※セット数は、体力アップに応じて5セットまで増やすようにします。
  • 【頻度】毎日
    ※はじめの内は様子を見て少しずつ頻度を上げていく。

筋トレTV 出演・動画監修 森部昌広 先生
九州共立大学 経済学部准教授・経済経営学科スポーツビジネスコース主任・サッカー部部長、一般社団法人全日本コンディショニングコーチ協会代表理事、一般社団法人日本メンタルトレーナー協会理事、九州大学非常勤講師(健康・スポーツ科学)、財団法人福岡県スポーツ振興公社スポーツアドバイザー、株式会社GET専務取締役、アイ・エム・ビー株式会社取締役、森部塾塾長