筋トレのメニューを組む際に効果を上げる上で重要となるのが、負荷がかかる方向を変えてあげるということです。フレンチプレスとキックバックでは上腕三頭筋(二の腕)を鍛える種目でありながら肩関節の角度が逆になることで二の腕に全く違った刺激を加えることができます。ここでは、この2つをメニュー例として、やり方をそれぞれ解説します。
ダンベルトレーニングの利点を生かした筋トレをしよう
上腕三頭筋を鍛える種目「フレンチプレス」をダンベルを使ったやり方で解説したいと思います。
ダンベルを使うことによって、集中して上腕三頭筋を追い込むことができるというメリットが一つ。そして、動かす方向に変化がつけられるという点でバリエーションを作りやすいというメリットがあります。
男性の場合だと上腕二頭筋(力こぶ)よりもボリュームを出すことが可能な上腕三頭筋を強化することによって腕を太く、たくましく見せることが可能になりますし、女性の場合は二の腕の余計なぜい肉が付いたたるんだ部分を効果的に引き締めることができますので、ぜひ正確に動きをマスターして筋トレに取り組んでもらえればと思います。
必要なものはダンベルです。ベンチがない場合は椅子で代用してよいでしょう。
まず体幹がぐらつかないように安定して座る必要があります。そのため、安定したベンチを使うこと、椅子の場合は強固なものを使う必要があります。パイプ椅子やキャスター付きのもので行うと転倒したり、滑ったりする危険性がありますので、安定、固定されているものを使って下さい。
フレンチプレスの方法
安全を確保できたら、ベンチや椅子に座って片手にダンベルを持ち、頭上に高く持ち上げます。
この時に耳と二の腕がくっつくように腕が真っ直ぐ天井に向かう形で持ち上げて下さい。
その状態から空いている手で二の腕部分を握って固定します。
その体勢のまま後頭部にダンベルを下ろすようにして肘を曲げ、そして伸ばします。これを繰り返します。
倒していく方向としては、完全に真うしろに倒す方法もあれば、少し横方向に倒す方法もあります。これはバリエーションとしてはありです。
大事なことは安全に動作ができるかということになりますので、どの方法がいいということではなく自分が一番安全(柔軟性などを考慮し)におもりをコントロールできるかということを考えてトレーニングを行って下さい。
もし、動かしている最中に肘の位置が耳から離れていってしまう場合は、ダンベルのおもりが重すぎることを示しています。
そのため、自分が扱える適切な重りを用いて、耳の横から離れていかないようにコントロールするように心がけて下さい。
右腕と左腕では左右差が出てきますので、弱い方(回数が少ない方)に合わせて重りを選択する必要もあります。
左右差が大きい人の場合は、どうしても強い方をもっと強くしないといけないのではないかと考えがちなのですが、アンバランスが大きくなるとあまりいいことがありませんので、まずは弱い方の底上げをしてあげます。
その過程で左右が揃ったときに少しずつ重さを増やすくらいで十分にトレーニングとして成立し、安全にトレーニングすることができますので、そのような方法で行うことを心がけて下さい。
そして、十分にインターバル(セット間休憩)をとって1セット目の疲労が回復した状態で反対側も同じようにトレーニングします。左右でフォームが変わらないようにコントロールして行うようにしましょう。
また、グリップがふにゃふにゃしているとおもりがブレてしまって非常に危険ですので、しっかり持つ手もただ重さを支えているというだけではなく、グリップを握り込んでぐらつきが無いようにコントロールしてあげることが非常に重要になってきます。
あとは出来れば鏡などを置いて自分の体の軸が左右にぶれたりしていないか、体を傾けて無理に上げていないか、そのようなところを見ながら正しいフォームで正確に行うというところをしっかりと集中して行ってみましょう。
フレンチプレスとは違った刺激を与えるキックバック
上腕三頭筋を強化する種目としてフレンチプレスに並んで非常にポピュラーな種目「キックバック」について解説したいと思います。
キックバックという動作は陸上競技のリレーでバトンリレーをする時と同じような姿勢を取り、肘関節を後方に伸ばして動作します。
肩関節の可動域には限界がありますので、可動域を十分にとって上腕三頭筋に効果的に刺激を入れるために体を折り曲げた状態で行うのが基本となります。
ベンチがない場合は、椅子でも構いません。椅子の場合は、座面など安定した部分に手を付いて上半身を床に対して並行に近いポジションに持っていきます。ベンチも同様です。
その姿勢から肘の位置を高く持ち上げて、そこから肘をうしろに伸ばしていく動作ができるポジションを取ってください。
おもりを持った手をうしろに伸ばすことによって、肘関節が伸びた状態になりますが、この状態が最も負荷が大きい状態となります。下ろす時に脱力をしてふにゃっと曲がってしまわないように注意をしながら、下ろす時にはゆっくり重力に逆らないながら曲げ伸ばし動作を行います。
上腕三頭筋は肘を伸ばすための筋肉なので伸ばす方をしっかりと意識して、そこに最大の集中力を発揮して下さい。
キックバックの方法
ダンベルを持ったら、手首がぐらつかないようにしっかりと握り込み固定します。
その状態から上半身を折り曲げ、体を安定させるためにベンチに前腕を付けます。そこから肘の位置をなるべく高い位置に引き上げて下さい。
肘の位置が低いとどうしても上腕三頭筋が完全収縮しませんので、できるだけ高いところにポジションを持っていきます。
そのポジションから肘を真っ直ぐに伸ばしていきます。
伸ばし切ったら、ブレーキをかけながら肘を曲げ元の姿勢に戻ります。これを繰り返します。
完全に伸ばした場合、おもりが重くなればなるほど伸ばし切ることがあまりできなくなってきます。
もし、反復回数にこだわってしまうと伸ばし切らずに動作したり、反動を使った動作になりますので、上腕三頭筋を効果的に刺激するためにはフィニッシュの(伸ばし切った)ポジションで一瞬動きを止めるくらいの気持ちを動作するようにします。
そうすることによって上腕三頭筋に大きな刺激を与えることができます。
もう一つのポイントとしては、肘の位置を高くキープし続けるためには三角筋の後部、うしろがわの三角筋をしっかりと収縮していないとどうしても肘を高く上げたままの姿勢でおもりを支えることができません。それゆえ、上腕三頭筋をトレーニングしながら三角筋の後部、それから広背筋までトレーニングしていることになります。
負荷が大きくなればなるほど、周りの筋群も強化せざるを得なくなりますので、最初はやや軽めの重量からスタートしながら、正確に上腕三頭筋にトレーニングの負荷を送り込むような筋トレのやり方というものをマスターしていただければと思います。
十分に反復回数がこなせるようになってきた場合、例えば反復回数が10回、12回、15回、20回、20回以上とどんどん回数が増えていった場合には、その時使っている重さでは軽い(十分な刺激を与えるには不十分)と判断しなければいけませんので、そこでおもりを増やしていきます。
おもりを増やしていくと上腕三頭筋の筋トレだけれども結果として三角筋や広背筋などにも大きな負荷がかかってくることが十分になりますので、そこまでいけば相当なレベルになっていると判断してよいでしょう。
まずは軽いところからスタートして正確に上腕三頭筋、肘を伸ばすための筋肉というものをしっかりと追い込むことで、体のアウトライン、見た目が綺麗になってきますし、何かのスポーツをやる場合もかなりアドバンテージが高くなります。
しっかりと強化をして弱点を改善、強化していきましょう。
筋トレTV 出演・動画監修
森部昌広 先生
九州共立大学 経済学部准教授・経済経営学科スポーツビジネスコース主任・サッカー部部長、一般社団法人全日本コンディショニングコーチ協会代表理事、一般社団法人日本メンタルトレーナー協会理事、九州大学非常勤講師(健康・スポーツ科学)、財団法人福岡県スポーツ振興公社スポーツアドバイザー、株式会社GET専務取締役、アイ・エム・ビー株式会社取締役、森部塾塾長