筋トレの順番・種目配列についての基本を学びます。一般的には、疲れてない最初の方で「大筋群+多関節運動」の種目を実施し、最後の方では「小筋群+単関節運動」の種目を実施することが効果的な順番とされています。具体的な事例を交えてみていきましょう。


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概要と補足

筋トレの順番(種目の配列)は、大きく2つに分けられます。

(1)大筋群→小筋群
大筋群(大胸筋・広背筋・僧帽筋・大腿四頭筋・ハムストリングスなど)の種目を行ってから、小筋群(前腕・上腕・三角筋・ふくらはぎ・腹筋など)の種目を行う方法

(2)多関節運動→単関節運動
多関節運動(ベンチプレス・スクワット・ショルダープレスなど)の種目を行ってから、単関節運動(ダンベルフライ・レッグエクステンション・レッグカール・サイドレイズなど)の種目を行う方法

大筋群を行って小筋群を鍛える方法は、疲労が無いか少ない時にメインの大筋群を十分に刺激することができます。
小筋群から行うと、どうしても後半は筋肉が疲れていたり、体力が低下した状態となり、大筋群を十分に刺激することができません。

大筋群を鍛える筋トレは往々にしてメインの部位以外の筋群も協働して働きます。

そのため、小筋群の筋トレを先に行ってしまうと大筋群を鍛える際には協働筋が疲労した状態となり、大筋群の種目の際にしっかりと効かせることが難しくなるのです。

例えば、ベンチプレスは協働筋として三角筋や上腕三頭筋などが働きますが、ベンチプレスの前に三角筋を鍛えるサイドレイズ(ラテラルレイズ)や上腕三頭筋を鍛えるキックバックを行ってしまうと、ベンチプレスの時に三角筋や上腕三頭筋が早くに疲労してしまい(目標のレップを行えない)、大胸筋を十分に刺激できなくなったり(※)、フォームの崩れを招いてしまうのです。
(※)目標のレップを行おうとしたら、本来扱える重量よりも下げないといけない。

多関節運動を行ってから、単関節運動を行う方法は、一般的に多関節運動の方が単関節運動よりも難易度が高く、技術と集中力が要求されることが理由に挙げられます。

つまり、疲労が無いか少ない時に多関節運動を行うことで、正確なフォームでの実施またはフォームの習得に適しており、安全性もある程度確保されることになります。

これらの配列方法はいわゆるガイドラインで基礎をなすものです。中上級者の場合は、目的に応じて単関節運動を先に行い、ターゲットとする筋群を疲労させて効果を引き出す「事前疲労法」などを行うこともあります。

筋トレ初心者の方は、効果を得やすく、比較的安全に進められる配列なので、メニューを組む際に十分に参考にするべきものであります。

2つの配列方法を示しましたが、通常は「大筋群→小筋群」と「多関節運動→単関節運動」の、どちらか一方を採用するものではなく、両方が組み合わされた配列になります。

具体的な種目の配列例

配列は無数にありますので、ひとつの例として参考にして下さい。

大腿四頭筋やハムストリングスの単関節運動は、それぞれ小筋群として分類される場合もありますが、ここでは大筋群に分類します。

【配列例】太もも・胸・上腕・腹筋のトレーニングを同じ日に行う場合
配列のパターンを流れの中で示すため同日の部位を多くしています。(下記の「押す動作・引く動作」、「上半身・下半身」の例も同様です)
腹筋は毎回行うとしても、通常は初心者の方がこれだけの量を同じ日に行うことはありませんので、参考までに留めておいてください。
一般的には、上半身の日、下半身の日、腕の日、胸と背中の日など、日を分けてトレーニングすることが多いです(スプリットルーテーィン法)
順番 部位 種目 分類
1 ハムストリングス
大殿筋
大腿四頭筋
バーベルスクワット 多関節・大筋群
2 大腿四頭筋 レッグエクステンション 単関節・大筋群
3 ハムストリングス レッグカール 単関節・大筋群
4 大胸筋 ベンチプレス 多関節・大筋群
5 大胸筋 インクライン・ダンベルベンチプレス 多関節・大筋群
6 大胸筋 ダンベルフライ 単関節・大筋群
7 上腕二頭筋 ダンベルカール 単関節・小筋群
8 上腕二頭筋 ハンマーカール 単関節・小筋群
9 上腕三頭筋 キックバック 単関節・小筋群
10 上腕三頭筋 トライセップスプレスダウン 単関節・小筋群
11 腹直筋 クランチ 単関節・小筋群

なお、アスリートなどスポーツ競技のパフォーマンスをアップさせる筋トレでは、パワー系種目(スナッチ・パワークリーンなど)→大筋群種目(コア種目)→小筋群種目(補助種目)で行う配列パターンもあります。

現代の研究では、一般の人における体づくりや体力アップもパワー系種目の実施が有効であるとされています。ただし、パワー系種目は難易度が高く、危険を伴うため指導者の下、実施する必要があります。

さらに細かく配列した場合

上記の配列を踏まえて、さらに細かく分ける方法もあります。

(1)「押す」動作と「引く」動作の種目を交互に行う方法。
できるだけ多関節と大筋群の組み合わせから最初に持ってきますが、優先されるのは「押す」「引く」を交互に入れることです。
「押す」「引く」の順番は交互に入れていけば、どちらが一番最初でも大丈夫です。

(2)「上半身」と「下半身」の種目を交互に行う方法。
できるだけ多関節と大筋群の組み合わせから最初に持ってきますが、優先されるのは「上半身」「下半身」を交互に入れることです。
「上半身」「下半身」の順番は交互に入れていけば、どちらが一番最初でも大丈夫です。

これらを考慮した具体的な配列例を示すと以下のようになります。

【配列例】 「押す」動作と「引く」動作の種目を交互に行う方法
順番 部位 種目 分類
1 ハムストリングス
大殿筋
大腿四頭筋
バーベルスクワット 押す動作・多関節・大筋群
2 大腿四頭筋 レッグエクステンション 引く動作・単関節・大筋群
3 ハムストリングス レッグカール 押す動作・単関節・大筋群
4 広背筋 ラットプルダウン 引く動作・多関節・大筋群
5 大胸筋 ベンチプレス 押す動作・多関節・大筋群
6 上腕二頭筋 ダンベルカール 引く動作・単関節・小筋群
7 大胸筋 ダンベルフライ 押す動作・単関節・大筋群
8 上腕二頭筋 ハンマーカール 引く動作・単関節・小筋群
9 三角筋 ショルダープレス 押す動作・多関節・大筋群
【配列例】 「上半身」と「下半身」の種目を交互に行う方法
1回のトレーニングで上半身・下半身を鍛える場合に使う方法です。動画で解説しているスプリットルーティン法とは違います。
順番 部位 種目 分類
1 ハムストリングス
大殿筋
大腿四頭筋
バーベルスクワット 下半身・多関節・大筋群
2 大胸筋 ベンチプレス 上半身・多関節・大筋群
3 ハムストリングス
大殿筋
大腿四頭筋
レッグプレス 下半身・多関節・大筋群
4 大胸筋 ダンベルフライ 上半身・単関節・大筋群
5 大腿四頭筋 レッグエクステンション 下半身・多関節・大筋群
6 広背筋 ダンベルロウイング 上半身・多関節・小筋群
7 ハムストリングス レッグカール 下半身・単関節・大筋群
8 広背筋 ラットプルダウン 上半身・多関節・大筋群
9 腓腹筋・ヒラメ筋 カーフレイズ 下半身・単関節・小筋群
10 上腕三頭筋 キックバック 上半身・単関節・小筋群

筋トレ初心者の方は混乱するかもしれませんので、基本的には最初に示した「大筋群→小筋群」と「多関節運動→単関節運動」を参考にメニューを組むのがいいかと思います。

一定のトレーニング経験を経たのち、「押す」「引く」や「上半身」「下半身」の配列もあったことを思い出し、必要に応じて採用して、メニューづくりに役立たせるのがいいでしょう。